トランプの飛行機は時代を反映したような仕様だった。深紅のベルベットの椅子、豪華な木製テーブル、分厚い額縁の絵画。「見栄えはいつも良かったよ」とマーカスは振り返る。「けれど、たとえば騒音抑制装置がついていなかったので、たしか夜11時以降は(ニューヨークの)ラガーディア空港に着陸できなかった。初めて搭乗したとき、『ほかに何が欠けているんだろう』と思ったのを覚えている」

50億円超かけて改装
トランプは最終的に、より上位の機種に買い替えることにした。2008年、彼はブローカーのベン・シリマンに連絡をとり、ボーイング767に興味があると伝えた。シリマンは、それだと場所によっては着陸が難しくなると忠告した。「それで『わかった、じゃあ757を探してくれ』ということになったんです」とシリマンは語る。ボーイング757は767よりもやや小ぶりの機種だが、それでもすべての空港に着陸できるわけではなかった。
シリマンはトランプに友人を紹介し、その友人はマイクロソフトの共同創業者ポール・アレンが所有していた1991年型の757を手配した。
購入に先立ち、トランプは別の航空機関連業者エリック・ロスに連絡した。ロスはプライベート機の内装カスタマイズを専門としており、機体を下見して写真を撮ってくるように頼まれた。トランプは取引を進めることに決め、改装に取りかかった。改装費は最終的におよそ3700万ドル(現在の為替レートで約54億円)に達したという。
「ディベロッパー(不動産開発業者)なら、たいていは社内に建築士やデザイナーを何人も抱えているか、そうでなくても必要なときに使えるものです」とロスは言う。「でもこの場合はまったく違いました。彼(トランプ)と私だけでやったのです」
フォーブスはトランプの代理人にコメントを求めたが返答はなかった。
お気に入りのお菓子コーナーも
ロスはトランプのペントハウスに着想を得て、大理石、クリーム色、そしてふんだんな金(きん)をあしらったデザインを考案した。シートベルトのバックルにも純金のメッキが施された。
トランプは映画の観賞用に、大きなテレビと優れた音響システムが欲しいと要望した。ヘッドレストに家紋の刺繍を入れるというアイデアも気に入った。また、食事に関して少し変わったリクエストもあったという。


