映画

2025.05.20 09:45

“映画はアメリカでつくれ” 配信時代に突入する映画業界、ハリウッドの行方とは

(Photo by Joe Raedle/Getty Images)

(Photo by Joe Raedle/Getty Images)

2025年5月、トランプ大統領は「アメリカで映画を制作する時代を取り戻す」と宣言し、輸入映画に100%の関税を課す方針を示した。また、1月には映画「ロッキー」で知られるシルベスター・スタローン氏を含む3人の俳優を「ハリウッド特使」に任命し、国内映画産業の復興を目指すと発表している。米国の映画業界団体やハリウッド俳優が加盟する労働組合の代表らは、関税措置に対しては言及せずとも、こうした映画業界への「支援」に感謝の意を表明。海外の制作拠点にも衝撃を与えている。

トランプ氏の発言の有無にかかわらず、ハリウッドの映画ビジネスは今、大きな岐路に立っている。コロナ禍や業界再編、そしてストリーミング時代の到来が、かつてのスタジオ主導の体制を揺るがしている。


業界再編、消えゆく“メジャースタジオ”の原型

『タイタニック』『アバター』など多くの名作を生み出した20世紀フォックススタジオはディズニーに買収され、ライオンが吠えるオープニングロゴで親しまれたメトロ・ゴールドウィン・メイヤーはAmazonに、そして『ローマの休日』『トップガン』などを生み出したパラマウント・ピクチャーズは新興のスカイダンス・メディアへの吸収合併が決まった。現在、独立したハリウッドのメジャースタジオとして残っているのは、ディズニー、ソニー・ピクチャーズ(旧コロンビア)、ワーナー・ブラザース(ワーナー・ブラザース・ディスカバリー傘下)、ユニバーサル・ピクチャーズ(コムキャスト傘下)の4社のみだ。

メジャースタジオの成長鈍化とNetflixの台頭

2023年、脚本家組合による約5カ月にわたるストライキが終結し、ハリウッド映画の制作は再開された。ウォール街では、これを契機に世界市場で劇場収入が大きく回復すると期待されていたが蓋を開けてみると、映画興行の復調は期待外れに終わった。

2024年の全世界劇場収入は前年比10%減の305億ドルにとどまり、主要スタジオの業績も明暗が分かれる結果となった。

• ワーナー:売上高116億ドル(前年比-23%)、経常利益17億ドル(-5%)
• ソニー:売上高83億ドル(-4%)、経常利益6.2億ドル(-13%)
• ディズニー:売上高83億ドル(+6%)、経常利益8.6億ドル(前年並)
• ユニバーサル:売上高111億ドル(-4%)、経常利益14億ドル(+8%)

対照的にNetflixは売上高390億ドル(+16%)、経常利益70億ドル(+49%)を記録。契約世帯は世界で3億を突破し、2025年には売上が435〜445億ドルに達すると予測されている。普及率がいまだ10%程度にすぎない現状を踏まえれば、今後の成長は長期にわたり期待できる。

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文=北谷賢司

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