実践のための三段階アプローチ
この猶予期間を最大限に活用するには、顧客との向き合い方を再構築する必要がある。以下の三段階アプローチが有効だ。
1. 事前にクライアント企業の勝ち筋、価値筋まで調べる
マーケットインの第一歩は、顧客企業の深い理解だ。顧客の業界構造分析、顧客企業の戦略・強み分析、勝ち筋・価値筋の特定を徹底して行う。
例えば、私たちが自動車部品メーカーをクライアントと考えるのであれば、自動車部品メーカーは米国での生産にシフトすることによって「関税回避」や「現地ニーズへの迅速対応」ができ、そこから「安定供給」や「柔軟な製品開発」といった勝ち筋を見出すことができている。
通常マーケットインというと、次の2番をいきなりしようとする。そうするとうまくいかないので気をつけて欲しい。顧客の勝ち筋を先に読むことが必要になる。
2. クライアント企業の方針(潜在ニーズ)を聴きに行く
事前調査で仮説を立てた後は、顧客企業と積極的に対話する。経営層との対話では関税環境下での経営方針を、現場責任者との対話では実務レベルでの課題認識を聴く。「なぜそう考えるのか」「その先にどんな課題があるのか」といった本質に迫る質問が有効だ。
3. 課題を一緒に解決し、共創パートナーへ
最終段階は、顧客との対話で明らかになった課題を共に解決することだ。課題解決を共同プロジェクト化し、総合的なソリューションを提案、継続的改善プロセスを構築する。「売り手vs買い手」ではなく「共創パートナー」としての関係構築がポイントだ。
実際、自動車部品業界では、猶予期間中にサプライヤーと自動車メーカーが「関税対応共同検討チーム」を発足させる動きが出ている。この過程で、関税の有無にかかわらず実施すべきサプライチェーン改革が明確になり、先行して取り組みを開始する企業も現れている。


