経営・戦略

2025.06.23 22:45

トランプ関税の今こそ、“マーケットイン経営”が鍵となる 90日で変わる企業の未来

4月2日アメリカへの輸入品に対する追加関税を発表するトランプ大統領(Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

実践のための三段階アプローチ

この猶予期間を最大限に活用するには、顧客との向き合い方を再構築する必要がある。以下の三段階アプローチが有効だ。

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1. 事前にクライアント企業の勝ち筋、価値筋まで調べる

マーケットインの第一歩は、顧客企業の深い理解だ。顧客の業界構造分析、顧客企業の戦略・強み分析、勝ち筋・価値筋の特定を徹底して行う。

例えば、私たちが自動車部品メーカーをクライアントと考えるのであれば、自動車部品メーカーは米国での生産にシフトすることによって「関税回避」や「現地ニーズへの迅速対応」ができ、そこから「安定供給」や「柔軟な製品開発」といった勝ち筋を見出すことができている。

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通常マーケットインというと、次の2番をいきなりしようとする。そうするとうまくいかないので気をつけて欲しい。顧客の勝ち筋を先に読むことが必要になる。

2. クライアント企業の方針(潜在ニーズ)を聴きに行く

事前調査で仮説を立てた後は、顧客企業と積極的に対話する。経営層との対話では関税環境下での経営方針を、現場責任者との対話では実務レベルでの課題認識を聴く。「なぜそう考えるのか」「その先にどんな課題があるのか」といった本質に迫る質問が有効だ。

3. 課題を一緒に解決し、共創パートナーへ

最終段階は、顧客との対話で明らかになった課題を共に解決することだ。課題解決を共同プロジェクト化し、総合的なソリューションを提案、継続的改善プロセスを構築する。「売り手vs買い手」ではなく「共創パートナー」としての関係構築がポイントだ。

実際、自動車部品業界では、猶予期間中にサプライヤーと自動車メーカーが「関税対応共同検討チーム」を発足させる動きが出ている。この過程で、関税の有無にかかわらず実施すべきサプライチェーン改革が明確になり、先行して取り組みを開始する企業も現れている。

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文=田尻 望

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