AI

2025.05.17 14:00

メタ「AIの訓練」に欧州の非営利団体が反発、集団訴訟の可能性

Mamun_Sheikh / Shutterstock.com

Mamun_Sheikh / Shutterstock.com

米メタは、個人のデータを人工知能(AI)モデルの訓練に使用する試みに関して、欧州の当局や市民団体の怒りを鎮めようと試みてきたが、その取り組みは成功していない。オーストリアの非営利のプライバシー保護団体NOYBは、メタに対する新たな異議申し立てを行った。

メタは昨年6月に、EU加盟国にアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーを加えた欧州経済領域(EEA)におけるAIのトレーニングを一時停止していたが、先月、成人ユーザーが投稿・コメントした公開コンテンツや、自社AIチャットボットの「Meta AI」とのやり取りを再びAIの訓練に使用する計画を発表した。

メタは、アイルランドのデータ保護当局からの懸念と、域内各地の当局への苦情の申立てを受けて、AIの訓練を一時停止していた。しかし、年末に欧州データ保護会議(EDPB)が示した見解を受けて、同社は自社の手法が「法的要件を満たしていることを認められた」と主張している。

「当社は昨年、法的要件の明確化を待つために、公開コンテンツを用いた大規模言語モデル(LLM)の訓練を延期した。そして、EDPBが2月に示した見解で、我々の以前からのアプローチが法的義務を満たしていることを認められた」とメタは述べている。

しかし、NOYBの見解はメタに真っ向から対立するものだ。「我々が把握している限り、メタは当局と協議を行ったが、いかなるゴーサインも得ていない。彼らはEUのデータ保護当局を無視して、前に進もうとしている」とNOYBの代表のマックス・シュレムスは述べている。

NOYBは今、メタに対して差止請求を送付し、欧州で集団訴訟に打って出ることを警告している。彼らは、メタがユーザーデータ処理の法的根拠としてEU一般データ保護規則(GDPR)の条文に含まれる「正当な利益(legitimate interest)」を主張していることに異議を唱えている。NOYBによれば、メタはユーザーからの明示的な同意(オプトイン)を得るべきであり、現在の「オプトアウト」のシステムはGDPRに違反しているとしている。

「欧州司法裁判所はすでに、メタがターゲティング広告のために『正当な利益』を主張することは認められないと判断している。AIの訓練のためにすべてのデータを吸い上げることに正当な利益があるはずがない。メタは、自社の金儲けのほうがユーザーの権利より重要だと言っているだけだ」とシュレムスは述べている。

「忘れられる権利」の問題も

NOYBはまた、GDPRが個人に認めた「忘れられる権利」や「不正確なデータの訂正権」「データへのアクセス権」についても、メタが対応できない可能性があると指摘している。加えて、メタが自社のAIモデルをオープンソースソフトウェアとして公開していることから、一度公開したモデルを回収したり更新したりすることもできないと警告している。

NOYBはさらに、メタがAIの訓練のために行っているデータ収集を、同社のターゲティング広告のためのデータの収集と比較している。この件でメタは、GDPRからの一連の訴訟を受けて、2023年にユーザーからの明示的な同意(オプトイン)を得る方向に転換していた。

「メタは、AIの訓練のためには個人のデータを盗むことが不可欠だなどという馬鹿げた主張をしている。ほかのAI企業はSNSのデータを用いずに、メタより優れたモデルを開発している」とシュレムスは述べている。

一方メタは、NOYBが事実と法律の両方において誤っており、自社のアプローチはEDPBが示したガイダンスに準拠していると主張した。

「当社は、EUのユーザーに対し、AIモデルの訓練に個人データが使用されることについて異議を唱える明確な方法を提供しており、いつでも申し立てられる旨をメールおよびアプリ内通知で伝えている」と広報担当者は述べた。「NOYBの行動は、EUにおけるAIイノベーションを遅らせようとする、声高かつ一部の活動家グループによる試みの一環で、最終的には最新技術から利益を得られるはずの消費者や企業に害を及ぼしている」。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事