Forbes ASIAは、今回で10回目となる「30 UNDER 30 アジア」リストを発表した。今年はAIを軸とした新世代の起業家とイノベーターに焦点を当てている。
顧客との通話内容の文字起こしといった単純作業を自動化するものから、ヘッジファンドの運用担当者に高度な分析を提供したり、新たな化学材料の発見を加速させたりするものまで、AIはスタートアップの革新を大きく変えつつある。実際、今年のリストに名を連ねる人々の3分の1以上が何らかの形でAIを活用しており、その潮流を受けて新たにAIカテゴリーが設けられた。
たとえば、ソウルに拠点を置くLinqAlpha(リンクアルファ)の共同創業者であるジン・キム(28歳)。昨年5月、キムはほかの3人(うち2人は「30 UNDER 30」のアルムナイ)とともに起業し、ヘッジファンドの運用担当者など投資家向けにテクノロジーを用いた分析を提供している。
同社のサブスクリプション型プラットフォームはAIを活用し、世界80以上の市場・20言語にわたる6万社超の企業を迅速に調査できるという。証券の提出書類や財務報告、決算説明会のトランスクリプトのほか、テキストファイルやPDF、ソーシャルメディアなど膨大なデータを解析する。
LinqAlphaは昨年、韓国のVCであるAtinum(アティナム)、InterVest(インターベスト)、Kakao Ventures(カカオベンチャーズ)、Smilegate Investment(スマイルゲートインベストメント)などから合計660万ドル(約9億5600万円)のシード資金を調達した。
32億円を調達したシンガポールの24歳
資金調達が難航する中、創業者たちにとってAIは投資家への価値提案を高める戦略的パートナーとなっている。最先端技術の可能性に賭ける投資家を惹きつけるうえで、AIの活用は欠かせない。
24歳のワン・グアンが2024年に共同創業したシンガポールのSapient Intelligence(サピエント・インテリジェンス)は、人間の知能に匹敵またはそれを超える汎用人工知能(AGI)の開発を目指している。
同社は数学、神経科学、機械学習を組み合わせ、数独のような非常に複雑なパズルを解くAIモデルを訓練している。昨年12月、Sapient IntelligenceはVertex Ventures(バーテックス・ベンチャーズ)や住友グループなどの投資家から2200万ドル(約31億9000万円)のシード資金を調達し、企業価値は2億ドル(約290億円)を超えた。
日本では、弓場一輝(29歳)が共同創業したHutzper(フツパー)が、製造業の品質検査を自動化し、コストを削減している。食品メーカーなどは、同社の「メキキバイト」技術を用いて異物混入や製品の損傷を検出できる。顧客には月島食品工業や東芝が含まれる。同社はイーストベンチャーズや広島ベンチャーキャピタルなどから、8億8300万円の資金を調達している。
こうしたAIの活用はヘルスケア&サイエンス、小売&Eコマース、金融&ベンチャーキャピタル、社会貢献分野など、今回のリストに選ばれたほぼすべてのカテゴリーで見られる。



