他者との間に境界線を引くことで、最終的に孤立してしまったという経験はないだろうか。もしかしたらあなたは、過去の恋愛で相手に傷つけられたり裏切られたりして、すぐさま「誰かと感情面であまり親しくならないようにしよう」と自分に言い聞かせたのかもしれない。もう無防備にはならないと心に決め、会話を表面的なものにとどめることで自分を守っていたのかもしれない。
だが時が経ち、その境界線は親しい友人との間にさえ距離を生み出してしまうリスクがある。あなたは、どうせ彼らには自分が経験したことは理解できないだろうと思う。そしてしばらくすると人々があなたに連絡を取らなくなっていることに気づき、孤独感を感じるかもしれない。
あなたが良かれと思って引いた境界線でも、時には裏目に出て人と疎遠になったり、気持ちを通わせることを妨げる壁をつくってしまうことがある。周囲の人とのつながりをもっと感じたいという人のために、よくある境界線の落とし穴を3つ紹介したい。
1. 過度な自立と健全な境界線との混同
世の中には、どんなに大変でも全ての物事を自分でこなそうとする人がいる。例えばつらい一日の終わり、誰かに話を聞いてもらいたいときや、重いものをアパートの3階にある部屋まで運ぼうとするときだ。そうした状況でも自分一人で何とかできると頑なになり、誰かに助けを求めようとしない場合、自立心は問題へと変わる。
あなたは、「誰の助けもいらない」と咄嗟に思うかもしれない。だが、本当にそうだろうか。そうした反応は過去、誰かに助けを求めても思うようなサポートが得られず、苦痛や失望につながった経験からきていることがある。だから再び助けを求めることを避け、過度に自立するのだ。
他者に依存しないのは強みだと自分に言い聞かせることで、自立という名の下に強固な壁を作る。こうした姿勢は、慢性的な孤独や燃え尽き症候群(バーンアウト)につながることもある。
一人で何かに取り組むたびに、どんなに自分を追い込んでも、あるいはもっと上を目指して努力しても、気持ちが晴れないことがある。心ではサポートを切望しながら、実際には求めることをためらうかもしれない。だが、親しい人に頼ることは、恥ずかしいことではない。
専門誌『Personality and Social Psychology Bulletin(パーソナリティ・アンド・ソーシャル・サイコロジー・ブレティン)』に掲載された2019年の研究によると、健全な恋愛関係は双方が自分の自律心や独立心を損なうことなく、相手に親近感を抱くことで成長する。自分または相手のどちらかの自律心や独立心だけを優先すると、優先されない側が弱くなるリスクがある。過度な自立は自律性を重視しすぎるためで、過去の傷やトラウマ、弱さへの恐れからくる防衛反応であることが多い。
常に他人に依存する必要はないが、厳格あるいは融通の利かない境界線は、恋愛関係であれプラトニックな関係であれ、親密な関係では途端に障壁になる。自己防衛が相手を避けたり、感情面で距離を置いたりする行為のようになり始めると、憤りや誤解、そして別れすら招く状況を作り出す。
だからこそ、時として相互依存を実践する必要がある。すなわち対立を処理できると信じ、頼れる人に依存することを学ぶことだ。それは、たとえ頼れる人が時折あなたの「神経を逆撫でする」ことがあったとしても、変わらない。境界線は他者との関係を完全に断ち切るためではなく、関係をより安全に保つために役立つものであるべきだ。



