宇宙

2025.05.16 11:00

米探査機ボイジャー1号、21年ぶりスラスター復活 250億km隔てた修復作業に成功

1977年に打ち上げられたNASAの双子の探査機ボイジャーの1機が恒星間空間を航行する様子のイメージ図(NASA/JPL-Caltech)

NASAの深宇宙ネットワーク

スラスター復活のための修復作業は、時間との闘いだった。ボイジャー1号にコマンドを送信するのに十分な信号出力を持つ唯一の施設が、メンテナンスのため2025年5月4日から稼働を停止してしまうため、2倍の速度で作業を進めなければならなかった。

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NASAの深宇宙ネットワーク(Deep Space Network: DSN)を構成する通信アンテナのうち、オーストラリア・キャンベラにある幅約70メートルのアンテナ「ディープスペース・ステーション43(DSS-43)」は、2026年2月までオフライン状態となる。主スラスターの復活により、DSS-43が停止している間も、ボイジャー1号はデータを地球に送信できるようになった。

オーストラリア・キャンベラにあるNASAのキャンベラ深宇宙通信施設(NASA/Canberra Deep Space Communications Complex)
オーストラリア・キャンベラ近郊にあるNASAのキャンベラ深宇宙通信施設(NASA/Canberra Deep Space Communications Complex)

月面着陸へ向けたアップグレード

DSNは、NASAのエンジニアが太陽系内外で稼働中の30機余りの無人探査機と通信し、データを受信するために欠かせない存在だ。キャンベラのほかに米カリフォルニア州とスペイン・マドリードに複合アンテナ施設があり、3つの施設はそれぞれ経度で約120度の等間隔に配置されている。

カリフォルニア州バーストー近郊のモハベ砂漠にあるゴールドストーン深宇宙通信施設に設置されたアンテナは、超高速の「宇宙ブロードバンド通信」に対応できるよう、2020年に改修が施された。アンテナのアップグレードは、月や火星に宇宙飛行士を送るNASAの有人探査計画の実現に不可欠だ。

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ボイジャー1号は現在、へびつかい座の方角の恒星間空間を航行中だ。へびつかい座はこの時期、東南~南の夜空にあり、「夏の大三角」をはくちょう座とは反対側に折り返すと見つかる。

2025年5月16日現在のボイジャー1号の位置を示した図。NASAのリアルタイム3Dデータ可視化サービス「Eyes on the Solar System」より(NASA)
2025年5月現在のボイジャー1号の位置を示した図。NASAのリアルタイム3Dデータ可視化サービス「Eyes on the Solar System」より(NASA)

forbes.com原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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