NASAの深宇宙ネットワーク
スラスター復活のための修復作業は、時間との闘いだった。ボイジャー1号にコマンドを送信するのに十分な信号出力を持つ唯一の施設が、メンテナンスのため2025年5月4日から稼働を停止してしまうため、2倍の速度で作業を進めなければならなかった。
NASAの深宇宙ネットワーク(Deep Space Network: DSN)を構成する通信アンテナのうち、オーストラリア・キャンベラにある幅約70メートルのアンテナ「ディープスペース・ステーション43(DSS-43)」は、2026年2月までオフライン状態となる。主スラスターの復活により、DSS-43が停止している間も、ボイジャー1号はデータを地球に送信できるようになった。

月面着陸へ向けたアップグレード
DSNは、NASAのエンジニアが太陽系内外で稼働中の30機余りの無人探査機と通信し、データを受信するために欠かせない存在だ。キャンベラのほかに米カリフォルニア州とスペイン・マドリードに複合アンテナ施設があり、3つの施設はそれぞれ経度で約120度の等間隔に配置されている。
カリフォルニア州バーストー近郊のモハベ砂漠にあるゴールドストーン深宇宙通信施設に設置されたアンテナは、超高速の「宇宙ブロードバンド通信」に対応できるよう、2020年に改修が施された。アンテナのアップグレードは、月や火星に宇宙飛行士を送るNASAの有人探査計画の実現に不可欠だ。
ボイジャー1号は現在、へびつかい座の方角の恒星間空間を航行中だ。へびつかい座はこの時期、東南~南の夜空にあり、「夏の大三角」をはくちょう座とは反対側に折り返すと見つかる。
