両国が窮地から脱出した今、それぞれの首脳は、成功するためには互いが必要であることを深く認識しているはずだ。とはいえ、中国が2001年末に世界貿易機関(WTO)に加盟して以降、同じことを続けるわけにはいかない。
中国の経済発展が輸出と投資に過度に依存している一方で、家計消費の割合がGDPの40%以下と世界最低水準にあることは、かねてより指摘されてきた。中国の政治家は、輸出への依存を減らし、内需を拡大することを繰り返し公約に掲げてきたが、これまでの結果は期待外れだった。一方、米国だけでなく欧州連合(EU)加盟国の間でも中国からの過度の輸入に対する抵抗が強まっている。
ベセント米財務長官は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な流行)に伴う供給網の混乱を受け、米国は半導体や医薬品、鉄鋼など、国家安全保障に不可欠な製品の輸入に過度に依存できないことが明らかになったと述べた。その上で、長期的な目標は、米中間の貿易関係を完全に解消することではなく、両国間の貿易上のリスクを取り除くことだと説明した。
今後明らかになるであろう事柄の1つは、今回の米中間の合意が米国の他の貿易相手国の手本となるかどうかだ。
米投資銀行パイパーサンドラーのアンディー・ラペリエールは顧客向け報告書の中で、トランプ大統領は10%の一般関税、25%の製品関税、30%の対中関税から成る関税率の公式をとりあえず作り上げたようだとの見方を示した。
だが、トランプ大統領は、多国間貿易協定より二国間協定を好む。中国より交渉力の弱い国々から、より大きな譲歩を引き出せると考えているからだ。米保守系FOXニュースのチャールズ・ガスパリーノ記者は、トランプ大統領が中国の要求に屈したのは、相互関税に債券市場が反発したからだとみている。米政府は法外な債務を有利な条件で返済する必要があるため、トランプ大統領は国債利回りの上昇リスクを冒すことはできなかったのだ。
ベセント財務長官は、EUとの交渉は長引く可能性があると示唆している。EUは近年、加盟国間の足並みの乱れに悩まされており、イタリアはフランスとは異なるものを望む可能性があるからだ。
いずれにしても、ラペリエールによれば、米国の貿易相手国が念頭に置くべき点は、トランプ大統領の関税に関しては、永久に続くものはないということだ。


