キャリア

2025.05.18 09:00

3割の従業員がAIツールを秘密で利用、生産性向上を隠す背景に企業はどう対応すべきか

voronaman / Shutterstock

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企業がAI(人工知能)に多額を投じ、従業員がその導入と活用に躍起になるなか、新たな現象が生まれている。企業で働くプロフェッショナルの多くが、AIツールをひそかに日常使いしているばかりか、そのことを秘密にしているのだ。

ITソリューション会社Ivanti(イヴァンティ)が発表した「2025 Technology at Work Report(職場におけるテクノロジーリポート2025年版)」によると、AIツールを職場で使っている従業員のほぼ3分の1が、そのことを会社側に伝えず、秘密にしているという。こうした事実が明らかになる一方で、AI導入は劇増しており、「仕事でAIを使っている」と答えた従業員は、2024年は26%だったが、2025年は42%に増加した。

当然ながら、従業員がAI使用を秘密にしているのはなぜかという疑問が浮かぶ。そこで、従業員がAI使用を隠したがる背景ではどのような心理が働いているのか、AIの力を借りた生産性が、仕事の未来にとってどのような意味をもつのかを見ていこう。

職場でのAI使用を隠したがる心理的な背景

イヴァンティの調査では、従業員がAIで生産性を上げていることを隠したがる主な理由が3つ挙げられている。

・AIを使うことで、同僚より「ひそかに優位に立っている」と回答した従業員は36%だった。職場という競争が激しい環境では、AIツールは強みであるため、使用していることを明かそうとしない。

・担当している業務を部分的にAIが遂行できることを雇用主に知られてしまったら、自分の職務が消滅してしまうのではないかと不安を感じている従業員は30%だった。こうした恐怖心は、AI使用の増加に伴う自動化と雇用の確保を巡って不安が広まっていることの表れだ。

Pew Research Center(ピュー・リサーチ・センター)が実施した調査では、「AIが今後の職場に与える影響について不安だ」と答えた従業員は52%と、半数を超えた。また、AIの導入が進めば「長期的には雇用機会の喪失につながると思う」と回答した人は32%だった。

・いわゆる「AIに起因するインポスター症候群(自分を過小評価し、自己不信や不安を抱く状態)」を経験したことがある従業員の割合は27%で、「ほかの人から、自分の能力に疑問を持たれたくない」と述べている。こうした心理的側面は、プロフェッショナルとしてのアイデンティティと仕事の成果がどれほど深く関係し合っているかを浮き彫りにしている。

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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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