かかる費用も膨大だ。オーストラリアは1960年以降、ネコ関連の管理に累計187億豪ドル(約1兆7600億円)以上を費やしており、これはどの侵入種に対するものよりも多い。こうした管理には、空からの射撃、毒餌作戦、排除フェンスの設置、探知犬などが含まれる。それでもなお、オーストラリア国土の99.9%にはネコが生息している。
オーストラリアは隔離されていることで、当地固有の生物が生き延びることができる楽園だった。しかし、オーストラリアの生物の多様性を形づくってきた特徴──動物の無防備さ、捕食者との接触の少なさ、防御手段の乏しさ──が、今では、命が極めて簡単に奪われる原因になっている。
1匹のネコが、生態系全体を破壊する可能性もある
そのことが観測されたのは、今回のマンドゥラーの大殺戮が初めてではない。2024年には、ニュージーランド南島にあるクラレンス川で、1匹の野生のネコが、クロビタイアジサシの巣を3夜で95個、意図的に壊していったことが記録されている。
巣作りの季節のスタート時に180羽いたクロビタイアジサシが、襲撃後は20羽しか残っていなかった。このシーズンの繁殖の取り組みは、1週間たらずですべて無になってしまった。
最も考えさせられるのは、1894年の教訓だ。ニュージーランドのスティーブンズ島で、灯台守が「ティブルス」という名前の妊娠していたネコを連れてきた。ティブルスと、野生化したその子孫によって、島固有のスチーフンイワサザイがたちまち皆殺しにされた。捕食する哺乳類がいないなかで進化してきた、飛翔能力のない鳴禽類だった。1年以内にこの種は絶滅した。
オーストラリアのネコの問題は、数の問題だけでなく、生態系全体の問題だ。何百万匹ものネコの管理が難しいのはもちろんだが、たとえ1匹のネコであろうとリスクを放置していると、1つの種が終わりを迎える危険がある。


