UPS
UPSは2025年4月29日、2万人の人員削減を発表した。これは、同社の116年間にわたる歴史のなかでも最大級の人員整理となった。
同社のキャロル・トメCEOは、機械学習を含む新しいテクノロジーが、こうした大規模な人員削減の引き金となったと述べた。こうした新技術によって、例えば、これまでは価格設定の専門家が必要だった、営業チーム向けの見積もり作成などのタスクも自動化が可能になったという。
UPSは、AIが直接的に人間の労働者を置き換えているわけではないとしている。だがその一方で、AIを利用したツールの採用により、物流の効率性向上や、配送ルートの最適化、顧客対応の効率化が進んでいる。こうした自動化が、一部のポストの必要性を低下させる上で一定の役割を果たしたことも示唆されている。
こうした展開は、UPSがインフレの進展を乗り切りながら、コストを削減するためにAIを活用していることを裏付けるものだ。
デュオリンゴ
人気の外国語学習アプリを提供するデュオリンゴは、「AIファースト」戦略を発表した。これは、AIで対応可能なタスクについては、人間との業務委託契約を段階的に廃止するというものだ。
LinkedIn(リンクトイン)に公開された、ルイス・フォーン・アーンCEOからの全社員向けメールでは、AIがコンテンツ作成や人事評価、採用の決断を主導する未来の姿が描かれている。
デュオリンゴは、業務委託先の10%について契約を打ち切ると述べ、その理由として、コンテンツ作成にAIを用いるという戦略転換を挙げた。同社の広報担当者は、この決断にAIが影響を与えたことを認め、同アプリが提供する教材を100以上の言語をまたがって翻訳するといったタスクも、今では自動化システムが担うことができると述べた。
デュオリンゴは、レイオフされた正社員はいない点を強調しているものの、今回の動きは、AI主導のコンテンツ作成にシフトし、人間の翻訳者への依存度を低減させることをはっきりと示すものだ。かつては自動化とは無縁と考えられていたクリエイティブ関連の業界でも、AIを採用して、これまで業務委託先の人間によって担われてきたタスクを置き換える動きが起きている。
インテュイット
「TurboTax(ターボタックス)」や「QuickBooks(クイックブックス)」といった製品を擁する財務管理ソフトウェア企業インテュイットも2024年、約1800人の従業員をレイオフし、これによって削減された経費をAIテクノロジーに再投資する意向を示した。
同社の経営陣は、自社の将来戦略においてAIは不可欠な要素だと述べた。なかでも、カスタマーサポートやデータ分析、税務申告に向けた準備プロセスの自動化に重点を置くという。人間の働き手をAIツールで置き換えることによって、効率化を進め、急速に進化するフィンテックセクターで競争力を維持することをインテュイットは目指している。
シスコ
シスコは2024年、全従業員の7%にあたる約5900人をレイオフする計画を明らかにした。これは、AIやサイバーセキュリティといった、成長率が高い分野への戦略的な方向転換の一環だ。同社は、自社のネットワークソリューションへのAIの統合を進めている。これには、ネットワーク管理における予測分析、カスタマーサポートシステムの自動化などが含まれる。
シスコのレイオフ計画は、新たに勢いを増しているテクノロジーに集中するための調整と位置付けられているが、ネットワーク監視やトラブルシューティングなどのタスクの実行にAIツールが導入されていることから、自動化によって一部のポストの必要性が下がっていることを示唆している。
シスコのケースは、人間の従業員数を減らして、逆にAIに任せる業務の領域を広げるという、より広範なテクノロジー業界におけるトレンドを裏付けるものだ。


