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2025.05.16 12:30

テスラに対抗するGMの「新型バッテリー」、低コストと長寿命化を実現へ

2025年2月、カナダ国際オートショーに展示された「シボレー・シルベラードEV」(Erman Gunes / Shutterstock.com)

2025年2月、カナダ国際オートショーに展示された「シボレー・シルベラードEV」(Erman Gunes / Shutterstock.com)

米国で最大の電気自動車(EV)のラインアップを展開する自動車メーカーのゼネラル・モーターズ(GM)は、新たな種類のバッテリーの導入により、電動ピックアップトラックや大型SUVの価格を数千ドル引き下げる計画だ。この新バッテリーは、安価なマンガンの使用量を増やし、高価なコバルトやニッケルの使用を大幅に削減しながら、長距離走行を実現する。

GMと同社のバッテリーパートナーであるLGエナジーが10年にわたり開発してきたリチウム・マンガンリッチ(LMR)正極材は、「シボレー・シルバラードEV」や「GMCハマー」、「キャデラック・エスカレード」などのEVモデルで使用されるバッテリーパックのコストを「6000ドル(約87万円。1ドル=145円換算)以上削減する見通しだ」と、GMのバッテリー担当副社長のカート・ケルティがフォーブスに明かした。

このバッテリーは、現在多くのEVで使用されている「高ニッケル」のリチウムイオン電池とほぼ同等の航続距離を持つもので、中国メーカーが製造する安価なリン酸鉄リチウム(LFP)電池に価格面で対抗できるという。LFP電池は重量が重く航続距離が短い傾向にあるが、LMR電池は少なくとも8年間、頻繁な充電に耐える耐久性を備えるという。

「私たちはこれをEVトラック用のゲームチェンジャーとなるバッテリーだと考えている。性能面でこのセグメントの新たな基準となるだろう」と、かつてテスラのバッテリー事業を10年以上にわたって率い、パナソニックにも在籍していたケルティは述べた。「LMRを用いれば、コストを下げつつ、400マイル(約644km)超の航続距離を実現できる」。

GMのLMRバッテリーパックは、LGエナジーとの合弁会社のUltium Cells(アルティウム・セルズ)がミシガン州とオハイオ州で生産する予定で、リチウムやマンガンといった原材料の大部分を中国以外のサプライヤーから調達する方針だ。また、コストの削減に向けて、GMは従来の円筒形ではなく「プリズマティック型」と呼ばれる平らなセル形状に移行する予定で、「これによりバッテリーパック内の部品数を50%以上削減でき、大きな違いが生まれる」とケルティは語った。

GMは米国のEV市場でテスラに大きく後れを取っているが、ラインナップの拡充と価格の引き下げによって今後の数年で巻き返しを狙っている。

現在、米国でのEV販売台数ではテスラが首位で、第1四半期に12万8100台を販売した。一方、同期間のGMの販売台数は3万1887台にとどまっていた。しかし、GMは自社が「米国で最も多くのバッテリーセルを製造している」と見ており、ホンダの高級車ブランドのアキュラのEVにも供給しているほか、シボレー、キャデラック、GMCの十数のモデルにもバッテリーを供給している(テスラは主にパナソニック製の高ニッケルリチウムイオン電池を用いている)。

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編集=上田裕資

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