経営・戦略

2025.05.15 14:00

タイの財閥TCC、傘下の「不動産投資信託」に1500億円で非上場化を再提案

インドネシア・メンテンにあるフレイザーレジデンス(RidhamSupriyanto / Shutterstock.com)

インドネシア・メンテンにあるフレイザーレジデンス(RidhamSupriyanto / Shutterstock.com)

大手財閥タイ・チャローン・コーポレーション(TCC)を率いるタイの富豪、チャローン・シリワダナパクディ(81)が支配する不動産管理企業「フレイザーズ・プロパティ」は、シンガポールに上場する不動産投資信託(REIT)の「フレイザーズ・ホスピタリティ・トラスト(FHT)」を非上場化する計画を進めている。

この動きは、2022年の非公開化の試みが頓挫したことに続くもの。今回の取引でフレイザーズ プロパティはFHTの評価額を13億7000万シンガポールドル(約1541億円。1シンガポールドル=112.5円換算)としている。

この取引は、規制当局の承認を前提とするもので、5月14日の提出書類によると、フレイザーズ・プロパティは、同社がまだ保有していないFHTの残りのステープル証券を1株あたり0.71シンガポールドル(約79.88円)で買い取ろうとしている。

「このスキームを提案するための決断は、軽々しく下されたものではない」と、買収を提案されたFHT運用会社のエリック・ガンCEOは声明で述べた。「今回の提案は、構造的な課題やますます複雑化するグローバル環境を踏まえ、我が社が運用を担う証券について保有者の利益を考慮したものだ」と彼は続けた。

フレイザーズ・プロパティが最初にFHTの非上場化を試みたのは、2022年6月のことで、その際同社は1株あたり0.70シンガポールドル(約78.75円)を提示した。しかし、少数株主からの賛同が、規制当局が要求する75%に届かなかったため、この取引は成立しなかった。それ以降金利上昇や為替の変動でマクロ経済情勢が悪化したことで、配当を増やすことや、資産価値を引き上げることが一層困難になったとFHTは説明している。

FHTの最新の年次報告書によると、REITの24.2%はフレイザーズ・プロパティが保有し、36.7%をチャローンのTCCグループ、残りは少数株主となっている。

2014年にシンガポール証券取引所に上場したFHTは、アジアやオーストラリア、ヨーロッパの主要9都市で8つのホテルと6つのサービスレジデンスからなる合計14物件を保有している。同社の約20億シンガポールドル(約2250億円)に上る資産ポートフォリオには、「インターコンチネンタル・シンガポール」や「ノボテル・シドニー・ダーリングスクエア」、「ウェスティン・クアラルンプール」などが含まれている。

フォーブスの推定で112億ドル(約1.6兆円)の資産を保有するチャローンは、タイで最も裕福な人物のひとりであり、フレイザーズ・プロパティのほかにチャンビールを製造するタイ・ビバレッジや不動産開発会社アセット・ワールド、小売チェーンのビッグCスーパセンターにも出資している。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事