われわれは新たな危機へと向かっているのか?
グロスミッシェル種が壊滅状態となったことを受け、バナナ産業はTR1への耐性が証明されたキャベンディッシュ種に軸足を移す。なめらかな食感と程よくしっかりした果肉、丈夫な果皮が特徴で輸出に向いていたキャベンディッシュ種は、1970年代までに輸出用バナナの約99%を占め、バナナ貿易を事実上独占した。
ところが、この成功は次なる危機の舞台をととのえてしまった。なぜならキャベンディッシュ種もまた、グロスミッシェル種と同様に、どれも狭い遺伝子基盤から繁殖されたクローンだからだ。
20世紀後半に東南アジアでパナマ病菌の新系統であるTR4が出現し、すでにオーストラリア、アフリカ、中東、中南米の21カ国・地域のバナナ生産国に広がっている。
市販されているキャベンディッシュ種のバナナのほぼすべてがTR4に感染しやすい。世界のバナナ生産量の80%(数十億食分)がTR4の脅威にさらされているとみられているが、現在のところ大規模な作付けが可能で商業栽培に向いた耐病性のある代替品種は存在しない。
オーストラリアで開発された遺伝子組み換えバナナ「QCAV-4」や、バナナのトップブランドであるチキータが主導する新品種「Yelloway One(イエロウェイ・ワン)」など、病害抵抗性を持つ品種の育成・開発への努力は希望を与えてくれるが、現状では規制上のハードルや一般市民からの懐疑的な見方が足枷となり、病害の拡大のスピードに対して開発ペースが遅い点がネックとなっている。
複数の品種でプランテーションを多様化し、しっかりした育種プログラムに投資し、強固なバイオセキュリティ対策を導入するなど、断固とした行動を起こさなければ世界のバナナ供給は再び崩壊の瀬戸際に立たされかねない。
バナナがいつでも手の届くところにある生活が日常となっている消費者にとって、見慣れた黄色い果物が食卓から姿を消すという暗い未来の予言はSFめいて聞こえるかもしれない。だが、歴史と科学が教えてくれるのは、もっと真剣な話だ。映画の続編がたいてい1作目よりつまらないのと同様に、かつて起こった歴史が繰り返されるとき、事態はいっそう悪化することが多い。


