バナナは地球上で最も愛されている果物のひとつだ。朝の食卓や弁当の定番で、スムージーの材料としてもおなじみだが、いつどこでも食べられるというメリットには脆い現実が隠れている。今日の私たちが食べているバナナは、ほとんどが単一の遺伝子系統に由来していて画一性が驚くほど高く、そのため病気に非常に弱いのだ。
この多様性の欠如は偶然の産物ではない。人間が何世紀にもわたって適応力の高さよりも品質等の一貫性を優先して栽培してきた結果である。そして今、アジアから中南米まで各地のプランテーションを脅かす土壌伝染性のフザリウム属真菌であるパナマ病菌熱帯レース4(Fusarium oxysporum f. sp. cubense Tropical Race 4:Foc TR4)によって、バナナに大きな災いがもたらされる恐れが生じている。
バナナは種子ではなく、根茎から出てくる新芽(子株)を切り取って株分けすることで増える無性生殖(栄養繁殖)植物だ。つまり、遺伝的多様性を防波堤として病原菌の進行を遅らせたり防いだりすることができず、伝染性の病害が一度発生しただけでプランテーションが全滅してしまう可能性がある。
歴史は厳しい警告を発している。20世紀半ば、かつてバナナ品種の主流であったグロスミッシェル種はパナマ病によって深刻な打撃を受け、世界のバナナ産業はほぼ一斉にキャベンディッシュ種への転換を余儀なくされた。
しかし、日持ちが良く輸送性が高いことで定評のあるキャベンディッシュ種も不稔性のクローン品種であり、今やグロスミッシェル種と同じ運命に直面している。品種を多様化して真に耐性のあるバナナ品種を開発しない限り、私たちは近い将来、歴史が繰り返されるのを目撃することになるだろう。しかも、はるかに大々的で壊滅的な規模で。