働き方

2025.05.15 12:05

60年前に予測された週14時間労働……機械化が進んでも労働時間がほぼ減らない謎

Getty Images

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はるか昔に比べてさまざまな分野でテクノロジーが発展し、効率化・自動化が進んでいます。すでに19世紀には人間の労働時間が1日4時間で事足りると予測する専門家もいたほど、これまで未来の労働時間が少なくなるという予測は各所でなされていました。ところが、現代社会を見たときに人間の労働時間が短くなったかというと――。

現代人に刻まれた労働観をあぶり出し、それにつけこむ「偽仕事」がどこにでも介在する実態と、生産性と充実度が高い働き方を提案するデンマークのベストセラーの邦訳版『忙しいのに退化する人たち やってはいけない働き方』(サンマーク出版)から、一部引用・再編集してご紹介します。


フォードが1926年に週休2日制を導入した理由

20世紀はじめからなかばにかけて、経済学者、政治家、社会科学者は、未来の社会は長い休暇の社会になると予想していた。それどころか早くも19世紀には、政治家で発明家のベンジャミン・フランクリンが一日4時間の労働でこと足りると論じていた。

ジョン・スチュワート・ミルらイギリスの哲学者たちは、人間のニーズの大半が満たされて仕事が必要なくなる時代を思い描いていた。

カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスは、『ドイツ・イデオロギー』でこんな社会について語っている。「朝は狩をし、午後は漁をし、夕方には家畜を追い、そして食後には批評をする──猟師、漁夫、牧人、批評家になることなく、気分に応じて好きなことができるのだ」〔邦訳67頁、訳は一部改変した〕

19世紀および20世紀における仕事観を詳しく調べたアメリカの歴史学者、ベンジャミン・クライン・ハニカットは、進歩とは仕事に費やす時間が減ることだとはっきり認識されていたと論じる。政治家はそれが自然な目標だと考えていて、やがてそれが労働組合運動の第一の目的となる。

産業界全体が等しく熱心だったわけではないが、20世紀にはこの傾向はあと戻りがきかないと考えられていた。自動車メーカー経営者のヘンリー・フォードは労働時間を短縮し、早くも1926年に週休2日制を導入した。フォードは、仕事時間を増やしても生産量は自動的に増えないことにいち早く気づいた産業界の巨人の1人だ。それに従業員が働きづめになっていたら、自社の車に乗る時間も見出せないと考えた。

フォードのあとに続く企業もあれば、懐疑的な企業もあった。経済上の理由からではなく、暇がありすぎると道徳的堕落につながると考えたからだ。

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文=デニス・ノルマーク、アナス・フォウ・イェンスン

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