経営・戦略

2025.05.14 13:00

米国最大のデジタル銀行「Chime」がIPO申請、四半期の「黒字化」も発表

Chimeの共同創業者でありCEOのクリス・ブリット(Photo by Richard Rodriguez/Getty Images for Chime)

Chimeの共同創業者でありCEOのクリス・ブリット(Photo by Richard Rodriguez/Getty Images for Chime)

米国最大のデジタル銀行であるChime(チャイム)が5月13日、株式市場の回復を背景に、米証券取引委員会(SEC)に公に新規株式公開(IPO)の申請書を提出し、詳細な財務情報を明らかにした。フォーブスが今年初めに報じていたように、同社の2024年の売上高は前年比30%増の17億ドル(約2550億円。1ドル=150円換算)となり、純損失は2500万ドル(約37億5000万円)と、2023年の純損失の2億300万ドル(約304億5000万円)から大きく縮小していた。

チャイムの2025年第1四半期の売上高は、前年同期比32%増の5億1900万ドル(約778億5000万円)で、純利益は1300万ドル(約19億5000万円)と黒字化を果たしていた。同社は、これ以前にも一部の四半期で黒字を達成したと過去に述べており、今回が初の黒字の四半期というわけではない。同社は、上場スケジュールの詳細を明かしていないが、IPOを申請した企業は、通常は数カ月以内に株式の取引を開始する。

2012年設立のチャイムは、無料の当座預金口座とデビットカードを提供することで人気を獲得し、給料を他行よりも2日早く受け取れるサービスを特徴としている。同社のサービスは、主に年収3万5000ドル(約525万円)から6万5000ドル(約975万円)の若年層をターゲットとしたもので、特に、給与や税還付金の振込先に、同社のアカウントを設定した「ダイレクトデポジット」の口座を持つ顧客に、200ドル(約3万円)までの無料の貸付や信用スコア向上を支援するセキュアドクレジットカード、個人向けローンなどの特典を提供している。

同社は、IPO申請書において、860万人の月間アクティブユーザーのうちの67%がチャイムをメインバンクとして利用していると述べている(同社は、月に15件以上の取引を行うか、月に200ドル(約3万円)以上の直接入金を行うユーザーを、メインバンクユーザーとしている)。

同社競合Block(ブロック)のCash App(キャッシュアップ)も長年ユーザーにダイレクトデポジットの登録を促してきたが、昨年12月の時点で5700万人の月間アクティブユーザーのうち、ダイレクトデポジットの登録者が占める割合はわずか4%にとどまっていた。

チャイムはブランドをより高所得層に広げようとする一方で、不況時にも堅調な事業であることを強調している。また、同社顧客が日常の支出にサービスを利用している点をアピールし、購入の70%が食料品やガソリンなどの必需品や公共料金などだと述べている。

サンフランシスコに本社を置くチャイムの収益の76%は、デビットカードやクレジットカードの決済時に加盟店が支払う1~2%のインターチェンジ手数料によるものだ。2年前にはこの割合が80%だったが、事業の多角化を図る中で若干低下した。

リスク要因には「関税」も

注目すべきもうひとつのデータは、2024年に同社が「取引およびリスク損失」として2億2000万ドル(約330億円)の損失を計上したことだ。これは、口座残高を超えて引き出した顧客が返済しなかった場合や、詐欺による損失を含めた金額だ。チャイムはまた、2024年に販売およびマーケティング費として5億1800万ドル(約777億円)、技術および開発費として3億1000万ドル(約465億円)を支出した。

IPO申請書によると、ベンチャーキャピタルのDSTグローバルが同社筆頭外部株主であり、5200万株を保有している。チャイム共同創業者のクリス・ブリットとライアン・キングの持ち株比率については開示されていない。

チャイムはビジネスリスクとして関税も挙げており、「関税率の変更によるマクロ経済の変化が、消費者物価や失業率、インフレ率を上昇させ、それが当社のプラットフォームにおける会員の活動に影響を与える可能性がある」と記している。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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