米中が互いの製品に対する高関税の一時停止で合意したことを受け、米政府は、中国から発送される小口貨物に適用される関税率を120%から54%に引き下げたと発表した。これにより、「SHEIN(シーイン)」や「Temu(テム)」、「AliExpress(アリエクスプレス)」といった中国の電子商取引企業にとっては救済となる可能性が出てきた。
米国と中国は12日、90日間相互に関税を引き下げると発表した。米国は中国製品に対する145%の関税率を30%に引き下げ、中国も米製品に対する125%の関税率を10%に引き下げる。
米ホワイトハウスは同日遅く、中国から発送される800ドル(約12万円)未満の小口貨物に適用される120%の税率についても54%に引き下げるとの大統領令を出した。当初の大統領令では、800ドル未満の中国からの荷物には120%の関税または郵便物1個につき一律100ドル(約1万5000円)の手数料が課されていたが、今回の命令で関税率は引き下げられたものの、一律手数料の選択肢は100ドルのままとなっている。一律手数料は6月1日に200ドル(約3万円)に引き上げられる予定だったが、今回の命令でこの引き上げは一時停止された。
米国のドナルド・トランプ大統領が4月2日を米国の「解放記念日」とするとして関税の引き上げを発表して以降、米中両国は貿易戦争を続けている。この引き上げでは、米国が貿易を行っているすべての国に最低10%の関税が適用されることになったが、多くの国にはそれよりはるかに高い税率が課せられた。トランプ大統領は中国に対し最も高い税率を適用し、145%に引き上げた。これについて同大統領は、麻薬性鎮痛剤フェンタニルの中国からの流入を制限するために米国が十分な対策を講じてこなかったことのほか、米国内での製造を増やすため、企業に中国から生産を移転させるための取り組みだと説明していた。
米国勢調査局の2024年のデータによると、米国にとって中国は第3位の貿易相手国だった。米国の対中輸出額は1435億ドル(約21兆1600億円)だったが、対中貿易赤字は2954億ドル(約43兆5700億円)に膨らんでいた。
トランプ大統領の関税政策は昨年の米大統領選挙の重要な争点だった。専門家は当時、関税は米国内の消費者物価を上昇させ、経済に悪影響を及ぼすと指摘していたが、同大統領は就任後直ちに追加関税の導入に踏み切った。
米国人の間で低価格で人気を博している中国のオンライン小売業者2社、シーインとテムは4月25日、トランプ大統領の関税措置を受け、価格を値上げした。両社は関税の引き上げによって運営費が増加したと説明した。米ブルームバーグ通信は、シーインの米国での売上高が、同社が値上げを実施した4月25日~5月1日までの1週間に前週比で23%減少したと伝えた。テムの米国での売上高も同期間に17%減少したという。
米国は「デミニミス(非課税基準額)」と呼ばれる規則によって、800ドル未満の小口貨物に対する関税を免除していたが、シーインやテムをはじめとする中国企業がこれを関税制度の「抜け穴」として利用しているとの批判も出ていた。トランプ大統領は同規則を一度廃止し、その後復活させ、5月2日に再び廃止した。



