経営・戦略

2025.05.13 18:00

バッテリー王者中国CATLが香港で二重上場、5900億円調達でハンガリー工場に投資

Photo Illustration by Thomas Fuller/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

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電気自動車(EV)向けバッテリーで世界最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)は5月12日、香港市場における新規株式公開(IPO)に向けて投資家からの注文受付を開始した。同社はこの上場で310億香港ドル(約5880億円)以上を調達する可能性がある。

ビリオネアの曾毓群(ロビン・ゼン)が率いるCATLは、この上場で少なくとも310億香港ドルの調達を見込んでいる。需要が予想を上回った場合は、株式の追加発行によって調達額が増える可能性がある。公募価格は早ければ13日にも決定され、取引開始は20日に予定されている。

福建省寧徳市に本社を置くCATLは既に深セン市場に上場済みで、時価総額は1兆1000億元(約22兆6000億円)に達している。同社は香港でのセカンダリー上場を通じて、ハンガリーでの工場建設に必要な資金を調達する計画だ。2022年に初めて発表されたこの工場の建設プロジェクトには、76億ユーロ(約1兆2500億円)の投資が見込まれており、完成すれば現地でおよそ1万人の雇用を創出するとされている。

CATLは香港市場での上場に向けて、中国石油化工集団(シノペック)やクウェート投資庁(KIA)、ヒルハウス・グループなど、20社以上のコーナーストーン投資家(※)を集めている。これらの投資家は、最大204億香港ドル(約3870億円)相当の株式購入に合意し、少なくとも6カ月間は保有を続けることを約束している。

※IPOの際、上場承認時に一定額の株式の事前購入を約束する投資家

ただし、香港のエバーブライト・セキュリティーズ(光大証券)ストラテジストのケニー・エンによると、一部の投資家はCATLに対し、香港での株価をより安く設定するよう求める可能性があるという。これらの投資家は、中国の家電大手の美的集団(ミデア・グループ)が昨年、香港でセカンダリー上場を行った際、より多くの海外投資家を引きつけるために深セン市場での株価に対して最大25%の割引価格で上場したことを指摘している。これに対し、CATLが提示した香港でのIPOの公募価格上限は、深セン市場での直近の終値からわずか1.4%の割引にとどまっている。

またCATLは香港市場でのIPOを、米国のオンショア投資家を除外するレギュレーションSにすることを明らかにしている。エンによると、同社がこのレギュレーションを採用したのは、米中間の緊張の高まりを受けて、リスクを回避するためと見られるという。

米国はCATLを「中国軍事企業」に指定

米国防総省は1月にCATLを「中国軍事企業」に指定し、中国の軍事的進展を支援していると非難した。CATL側はこれを否定したが、米国の議員らはバンク・オブ・アメリカやJPモルガン・チェースに対し、CATL上場の主幹事から撤退するよう求めていた。

しかし、これら2行は引き続き中国国際金融(CICC)やゴールドマン・サックス、UBSらと並んでCATLの香港上場に関与している。

CATLは、関税のリスクについても目論見書で言及した。同社は、中国で製造した製品の米国への輸出から得ている収益が「比較的限られている」としているが、「関税政策は急速に変化している」と述べて、今後の状況がどう変化するかを予測するのは難しいと強調した。

CATLが3月に発表した2024年の通期決算は、売上高が前年比9.7%減の3620億元(約7兆4400億円)で、純利益は16.8%増の553億元(約1兆1400億円)だった。目論見書によると、同社の売上の約70%が中国本土からのものという。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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