全国に広がっていく、希望の光
クレームから始まったLEDの物語は、わらしべ長者のように偶然と想定外のクライマックスに向かった。LEDライトの製造業だったはずが、9000人の仲間をつくり、そして「フェスタ・ルーチェ」(イタリア語で光の祭典)という大型イベントとして、 毎年、和歌山の冬の風物詩になった。
2017年度の第1回から24年度開催まで、83万人が夜に輝く光を楽しむために訪れた。また2年前からは和歌山市のけやき大通りの樹木351本に100万球が飾られ、日本一の街頭イルミネーションとして街に大勢のにぎわいをもたらしている。
「うちの町でもやってほしい」という依頼は全国から寄せられている。高齢化で祭りの開催が難しくなった町、過疎で人影が少なくなった町、子どもたちの歓声を聞きたい遊園地。古澤たちは、青森、愛媛、島根、栃木でもフェスタ・ルーチェを開催した。
「僕らは今暗いところに光をともすのが仕事です」と、彼は言う。フェスタ・ルーチェの開始から8年の間に、コロナ禍が起こり、多くの日本人が不幸に直面した。加えて、人口減少も高齢化も過疎化も進んでいる。それでも、光をともすと、どんな場所にも人々が集まり、賑わいが生まれ、祭りが始まり、誰もが笑顔で祭りに感謝し、地元企業の多くが協賛体制をつくった。
だからこそ、全国に光をともし続ける古澤はこう思わずにいられない。
「この光がみんなの希望の光になりますように」と。
古澤良祐◎1977年、愛知県生まれ。大学卒業後イギリスに留学、帰国後にタカショー入社。国際部にて社長の秘書兼通訳として世界を飛び回る。入社2年目にLEDと出会い、社内ベンチャーとしてタカショーデジテックを設立。


