アニメはもはやオタクや子どものものではなくなった。世界市場において、日本アニメの存在感をどう示せるか。マクアケ創業者による好評連載第52回。
今やや老若男女問わず人気を集めているアニメ。しかし、つい10年ほど前までは、“アニメは子どもやオタクが見るもの”という認識が一般的だったように思う。それを示す印象深い出来事が、2015年5月8日にあった。人気音楽番組のミュージックステーションに、アニメソング歌手のLiSAと藍井エイルが出演したのだ。今や「鬼滅の刃」や「ソードアート・オンライン」など、人気作品の主題歌を歌ったことで有名人になったふたりだが、当時はまだ特定の層にしか知られていない存在だった。そのため、SNSでは「誰?」という反応が多く飛び交った。一方でアニメファンたちは歓喜し、私自身もそのひとりだった。アニソン界のトップ歌手が地上波番組のゴールデンタイムで共演することは、アニメファンにとって「社会進出」ともいえる大きな出来事だったからだ。
あれから10年。今や、アニメのタイアップは人気歌手にとって当たり前の戦略となり、日本のアニメ産業は急成長を遂げた。2015年に1.8兆円規模だった市場は、23年には3.3兆円に成長。今後もさらに拡大を続けるだろう。コロナ禍をきっかけに動画配信サービスも急成長し、日本のアニメは海外視聴者へのリーチを大きく広げた。Netflixの「今日のTV番組TOP10」がすべてアニメ作品で埋め尽くされることもある。
昨年末にはソニーグループがKADOKAWAと資本業務提携し、KADOKAWAがもつライトノベルなどを中心としたIP(知的財産)を生かしたコンテンツの世界展開を狙っている。同社は2021年に世界最大級のアニメ動画ストリーミングサービス「クランチロール(Crunchyroll)」を約11億7500万ドルで買収しており、アニメ制作・プロデュース会社、音楽レーベル、ゲームプラットフォームを傘下にもつ総合アニメ商社へと進化している。
サイバーエージェントも、ABEMAを中心にIPの創出や育成を中長期的に目指す戦略を発表しており、24年にはゲームやアニメのコンテンツを手がける制作会社ニトロプラスを子会社化。アニメを活用したスマートフォンゲームの開発、グッズ制作など、アニメビジネスへの投資を加速させている。さらには伊藤忠商事が昨年、アニメ事業への参入を発表するなど、異業種からの大規模な参入も相次いでおり、気がつけば、日本のアニメ市場は大企業がひしめく戦国時代のような状況になっている。アニメはもはや、子どもやオタクだけのものではなくなった。この現象は海外へも波及するだろう。映画や配信にとどまらず、ゲーム、アミューズメントパーク、グッズ、ライブといった多様なマネタイズ手法が生まれ、海外市場への展開も加速している。



