安倍も大きな改革をひとつは行った。企業統治(コーポレートガバナンス)改革である。安倍政権は英国を参考にしたスチュワードシップ・コードを導入し、投資収益の向上や投資家の発言力強化、企業による取締役会の多様化促進を図った。
日銀の異次元緩和、円安、そしてバフェットをも動かすに至った企業統治改革への期待感によって、日経平均は2024年には1980年代のバブル経済期を上回り、史上最高値をつけた。
だが、その熱気も今では、ドナルド・トランプ米大統領による貿易戦争のあおりを受けて冷え込み始めている。また、自民党政権は、長年、構造改革を掲げながら実行をおろそかにしてきたツケが回ってきている。次の国政選挙は2カ月あまり先に迫る。
石破茂首相はきっともう少し時間が欲しかっただろう。足元でせいぜい35%の石破の支持率よりも急速に悪化しているものは、日本経済の2025年の見通しくらいしかない。日本では物価の上昇率に賃金の伸びが追いつかず、消費者の信頼感も企業の景況感も低下している。トランプが自動車に課した25%の追加関税が重しになっているのは間違いない。トランプが「相互関税」と称して課した24%の関税は、交渉で石破のチームがかなりの譲歩をしなければ一段の打撃になるのが必至だ。
そこでバフェットだ。彼が別れ際に日本に贈ったプレゼントは、ニューヨークから上海、東京まで市場が大きく動揺する時期にあっても、日本が金融の「避難所」になり得ることを、世界にあらためて印象づけてくれたことだ。
国際通貨基金(IMF)のナダ・シュエイリ・アジア太平洋局副局長の言葉を取り上げるだけで十分だろう。彼女は円についてこう言っている。「経済の予測可能性と安定性、さらにその強さを考えれば、安全通貨であることに変わりはない」
石破は、日本を良い意味で注目させるきっかけになった「バフェット効果」に乗じるべきだ。繰り返せば、ひとりの人物の発言や行動が、日本を「現状への安住(コンプレイセンシー)」から抜け出させることはないだろう。変化を嫌がるそうした姿勢は残念ながら、日本の「バグ」というよりむしろ「仕様」になってしまっている。
それでも、7月後半の参議院選挙で石破の自民党が票を獲得する最善の策は、変革と競争力向上という旗印を再び掲げることだ。バフェット効果を利用して、バークシャーを日本に引き寄せた当の政策を早急に強化することを打ち出してはどうか。今のところ、日本にほかに魅力的な選択肢はあまり見当たらない。


