前回大会で起こったある出来事
では、このセッションの場で、日本の宣言した公約を見てみよう。
その前に、日本の海洋についての行政の現在地について復習したい。日本にはG7各国やEU政府、また韓国のような「海洋省」がない。海洋についての行政を包括的に統括している政府の組織がないのだ。現状では内閣府に総合海洋政策本部(通称「海本部」)という部署があり、防災兼海洋担当の特命担当大臣の下に置かれている。
しかし、実際の業務は、漁業は農林水産省、海上保安は国土交通省、海洋汚染は環境省、気候変動は気象庁、条約締結は外務省、深海探索は文部科学省、海底資源は経済産業省と、管轄が縦割に分散されている。
今回の会議にはこの海本部から内閣府のナンバー2に当たる審議官がプレナリーセッションの舞台に立った。
その発表は、気候変動・海洋汚染・海上安全保障にまつわる31件、19億ドルの公約で、詳しい内容としては、海ごみに対する責任としてプラスチックの大量消費・廃棄国が参加する条約締結を目指しており、G20に向けた汚染対策の報告書の作成、汚染モニタリングの技術協力などに注力し、海洋基本法に基づく包括的海洋政策を進めている、とのことだった。
前述のこの大会の7つのメインテーマのうち、3つには触れてはいたが、世界の喫緊の重点課題である水産資源の持続可能な活用や経済発展を含む残り4つのメインテーマについては一切触れられていなかったのは残念だった。
日本の公約を発表した、今回が初参加となる当の審議官と話をする機会があった。審議官からは「この国際会議は水産に重点を置いているのですね」と率直な感想を言われたので、これには「持続可能な水産は世界の最重要課題の1つです。日本は縦割り行政なので困難が多いですね」と答えた。
日本にも海洋省のような一元化した政府の組織があれば、より包括的な公約ができたはずだ。今後の海洋についての行政の在り方について国民みんなで考えるべき時が来ているのではないだろうか。
昨年、ギリシャのアテネで開催された第9回アワオーシャンコンフェレンスでは、ある出来事があった。
IUU-AAという違法漁業撲滅を目的とした国際連携のために、当番国となったカナダ政府の主導で約20カ国が一堂に会する朝食会が開催されたのだが、日本政府の席だけが空席、しかも無連絡のドタキャンという事態になっていたのだ。
カナダ政府やコーディネーター役の米国のスタッフから、非政府会員として招待されていた私は、いったい何があったのかと散々訊かれた。そこで日本の行政から参加されている人たちを会場内で探し、夕方やっと見つけたのは、図書館に引きこもっている姿だった。
そのほかの日本が関わる重要な議論のセッションにも招待されていたのだが、一切参加してもらえなかったのは残念でならなかった。
IUU-AAは、日本以外のG7すべての国を含む16カ国が批准する、違法・無報告・無規制で多大なる経済損失と環境劣化をもたらす漁業を世界中から撲滅する目的の組織だ。
活動は月1回2時間程度のオンラインミーティングで、目的は世界各国との情報共有や火急の課題の確認であって、何の義務もなければコストもかからないので、日本政府の早期参加が待たれる。ちなみに韓国は東アジアでいの一番に加盟している。


