成果と得られた教訓
AIをCEOやマネージャーとして起用した企業はまだ少数だが、いずれの事例も象徴的かつ実験的な要素が強い。AIは意思決定の効率化や業務サポートでは明確な価値を示しているものの、最高レベルのリーダーシップに必要とされる人間らしさ――すなわち共感や倫理的判断――は置き換えが難しい。今後の経営は、AIが人間のリーダーを強力に支援する協働関係へと向かう可能性が高い。
実際、AIがリーダーシップを担った事例を概観すると、AIはデータ駆動型の定型業務や分析タスクに優れている一方、人間的要素を伴うマネジメントでは課題を抱えている。ディクタドールのMIKAはブランドの注目を集めたものの、主要な意思決定は最終的に人間側が担った。NetDragonのMs. Tang Yuは効率を向上させたが、一部の従業員を疎外した。DeepKnowledgeのVitalは生産性を高めたが、チームの士気の維持までは難しかった。2023年のNPRによるカスタマーサービス分野の調査でも同様の結果が示され、AIは生産性を14%向上させたが、人間の代替よりも補助として最も効果的だったという。
これらの事例が示すのは、AIはあくまでも人間のリーダーを支えるツールとして最適であり、その代わりにはなりにくいという点だ。インスピレーションを与えたり、複雑な判断を要したりする場面では、人間固有の共感力や柔軟性、ビジョンが依然として欠かせない。
2024年に実施されたAonの調査によれば、人事業務にAIを導入している企業の85%が「時間の節約になる」と認識しているが、倫理的・感情的な問題に対処するためには人間による監督が不可欠だとしている。さらにTechRepublicが2025年に発表した予測では、2030年までに企業の25%がミドルマネジメント業務にAIを採用する可能性がある一方、依然として人間の監督下にとどまるとされている。
上司やCEO、あるいはマネージャーとしてのAIが登場する事例は、大いなる野心と警告の両面を映し出している。AIはオペレーションを最適化し、コストを削減する能力を持つ一方で、感情的知性や戦略的ビジョンの面で不十分な点があり、単独で経営トップの座を任せるにはまだ早いと言わざるをえない。現時点で最も成果を上げている企業は、AIの正確性と人間の洞察力を組み合わせ、双方の強みを活かすパートナーシップを構築しているところだ。


