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2025.05.16 12:00

備えよ、新しい上司はAIかもしれない

Moor Studio / Getty Images

ディクタドールがMIKA(ミカ)というAI CEOを任命

2022年9月、ポーランドのラムおよびスピリッツ企業であるディクタドール(Dictador)が、AI搭載のヒューマノイドロボットMIKA(ミカ)をCEOに任命し話題を呼んだ。これはHanson Robotics(ハンソン・ロボティクス)との共同開発によるもので、ボトルデザインの選定やマーケティングキャンペーンの承認、戦略プロジェクトの指揮など、データに基づく意思決定を担う役割とされた。

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MIKAの在任期間の成果については賛否が分かれる。ディクタドールの経営陣は、商品デザインやサプライチェーン管理といった領域で意思決定を効率化したと評価している。しかし、主要な戦略や財務に関する決定権は人間の経営陣が握っており、批判的な意見ではMIKAは「実質的にハイテクアシスタントにすぎない」とする向きもある。従業員を鼓舞したり社内政治を調整したりするなど、リーダーシップの微妙な側面は現状のAIにはまだ難しい領域だ。

NetDragon WebsoftのAI幹部「Ms. Tang Yu」

2022年8月、中国のゲームおよびテクノロジー企業であるNetDragon Websoft(ネットドラゴン・ウェブソフト)は、子会社Fujian(福建)NetDragon Websoftの「輪番CEO」として、AIベースのバーチャルヒューマノイドであるMs. Tang Yu(タン・ユー女史)を任命した。これは、業務全般の監督やリアルタイムでのデータ分析、人間マネージャーの意思決定を支援するよう設計されている。

NetDragonは、Ms. Tang Yuの関与により良好な結果を得たと報告している。声明によれば、業務効率は10%向上し、サプライチェーン管理における意思決定ミスも減少したという。数千のデータポイントを同時に処理できるため、人間の管理者が見落とす可能性のあるコスト削減の機会を見つけられたとされる。

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しかし2023年のTechCrunch記事で報じられたように、従業員側には課題もあった。一部の労働者は、共感や職場の力学を理解しないAIの「上司」に疎外感を覚え、クリエイティブなコラボレーションを必要とするチームでは士気が低下したという。

DeepKnowledge:マネジメントツールとしてのAIを採用

英国を拠点とする知識共有プラットフォームのDeepKnowledge(ディープナレッジ)は、2022年にVital(バイタル)というAIシステムを特定の運営チームのマネージャーとして導入した。VitalはCEOではなく、タスクの割り当てやプロジェクト進捗の監視、設定された指標に基づく従業員評価などを担った。主にリモートチームの生産性を最適化するため、データ分析やコンテンツ制作の領域で活用されている。

従業員の中には、AIの明確な指示によってプロジェクト目標の曖昧さが減ったと評価する声もあった。しかし、一部からは常時監視されているように感じるという不満や、モチベーション面のサポートが欠けているという指摘もあった。

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翻訳=酒匂寛

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