地面を数十キロメートル掘り下げるとマントルという層にたどりつく。そこは緑色の透明な鉱物で構成される世界だ。それが高温高圧で別の物質に変化してゆっくりと流れる層がある。なぜそのような層が作られるのかは謎だったが、国際科学者チームがその形成メカニズムを解明した。この研究は幅広い分野に応用できるという。
地球の中心には鉄とニッケルでできた直径約7000キロメートルの硬い「核」がある。その上に厚さ約2900キロメートルのマントルがあり、さらにそれをタマゴの殻のような地殻(地面)が覆っている。マントルは地球の体積の8割以上を占める。昔は、真っ赤に溶けた溶岩のようなもので満ちていると考えられていたが、最近の研究ではマントルの上層部は透明な緑色の宝石のようなケイ酸塩鉱物「かんらん石」で構成されていることがわかった。そして深度が増すごとに高温と高圧で別の物質に変化する。
地表から約410キロメートル付近の「不連続面」では、かんらん石がワズレアイトという鉱物に変化するのだが、そのあたりでは観測される溶けた鉱物が2層になってゆっくり流れる「メルト層」が現れることがある。その形成メカニズムを、岡山大学の芳野極教授が参加する日英仏米の国際的な科学者チームが調査した。理化学研究所の世界最高性能の大型放射光施設SPring-8にて、不連続面あたりの高圧高温環境を再現して含水ケイ酸塩溶融体の粘性を測定した。
その結果、含水率が高くなると劇的に粘度が下がることがわかり、さらに1次元シミュレーションにより、特定の条件により2重のメルト層の形成と挙動の原因が明らかになった。それは、アラビア半島南部のマントルが上昇する地域に見られるメルト層の移り変わりを完ぺきに説明できるという。
この発見は、火山活動や地殻プレートの移動などに影響を与えるマントルの上昇流「アファープルーム」とも関連するため、地震予知や新たな鉱物資源の発見など幅広い応用が期待でき、さらに惑星進化に関する理解に革命をもたらす可能性があるとのことだ。



