マーケティング

2025.05.22 13:30

ひらめきは偶然ではない、ありきたりを超える5つの思考ステップ

Getty Images

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なぜあの商品が売れるのか──。心を動かすアイデアの鍵は、隠れたホンネ「インサイト」にある。潜在ニーズをとらえるインサイト思考と、その実践法を探る。


世の中には「どうやってあんなことを思いつくのだろう」「あの人はセンスがある」と思わせる人がいる。そうした人たちは「インサイト」を見出すのが得意だ。インサイトとは潜在ニーズにつながる、人を動かす隠れたホンネのことだ。本コラムでは、『センスのよい考えには、「型」がある』の著者ふたりに話を伺い、インサイトを見つけるプロセスや、それを実践する方法について探っていく。

──なぜ今「インサイト思考」が必要なのか。

佐藤真木(以下、佐藤近年のデジタル化の波に伴い、マーケティングでのデータ活用が浸透してきました。その反動として、感覚や気づきなどの人間性が求められるようになってきていると感じます。データは有力なツールですが、そこに表れない本質を見抜けるのが人間の感覚。この両輪で物事をとらえることが重要です。

阿佐見綾香(以下、阿佐見過去のデータや実績に基づくマーケティングでは、似たような施策に陥りがちで、人を動かす購買の動機は見えてきません。新しい打ち手を見つけるためには、インサイトを起点に考えることが必要です。

例えば、コカ・コーラが過去に行ったアンケートでは、「コカ・コーラをいつ飲みたいか」という質問に「暑いとき」や「ハンバーガーと一緒に」という回答が多くありました。しかし、そのまま「暑い日にハンバーガーと一緒に飲む」ことを訴求する広告をつくってもありきたりです。そこで担当者は「特別な理由はないけれど無性に飲みたくなる瞬間があるのでは?」と考え、「No Reason」というキャッチコピーで広告を展開。売り上げを爆発的に伸ばした事例があります。

──インサイトを見つけるためのプロセスとは。

佐藤:プロのマーケターに「インサイトとは何か?」と問い続けていくと、5つの思考のステップがあることがわかりました。まるで出世魚のように、自分の感覚をインサイトへと育てているのです。具体的には、1. 日常の気づきや違和感に目を向け、2. 違和感を抱いたのはどんな常識かを把握し、3. その常識の裏には、どんなホンネが隠れているのか疑問をもつ。4. 隠れたホンネを自分の納得いく言葉にして、5. 他者に納得してもらえるかたちで伝える、というプロセスです。センスがあるように見える人は、これを瞬時に頭のなかで行っているのです。

例を挙げると、お酒が飲めない私は、飲み会で「遅くまで付き合わせてごめん」と言われるたび、申し訳なさや寂しさを感じていました(1.)。お酒を飲めない人は「無理に付き合っている」「飲み会が嫌い」と思われがちです(2.)。しかし、飲めないからといって、必ずしも誰もがお酒の場自体が嫌いなわけではないのでは? という問いを立て(3.)、その疑問を掘り下げると、嫌いなわけではなく「飲める人ばかり楽しんで“ずるい!”」 という隠れたホンネ=インサイトにたどり着きました(4.)。実際に調査すると、ホンネに対して多くの人の共感が得られただけでなく、さまざまなリアルな声やシーンが引き出され(5.)、100種類以上のノンアル・ローアルコールドリンクを提供する「スマドリバー 渋谷」の展開につながりました。結果、日本マーケティング大賞を受賞するなど、大きな反響がありました。

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文=川上みなみ

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