同様に、ウクライナのNATO加盟を認めることは、同国がソ連からの独立後に放棄した強力な核兵器と引き換えに米国が差し伸べた安全保障の誓約を発展させることになり、国際的に核軍縮の模範となるだろう。逆に、武装解除したウクライナが核超大国のロシアに領土を奪われれば、世界の他の国々が核保有に追随する恐れもある。プーチン大統領の帝国主義的野心の潜在的な標的として狙われてきた旧ソ連の構成国や衛星国を中心に、ますます多くの国々がロシアの新たな征服対象とならないよう、核兵器の保有を目指す可能性があるからだ。
パイファー元大使は、ロシアがウクライナに侵攻したことで、核を保有する国と国境を接する国々が核兵器の保有について検討するようになるというバロ外相の意見に同意した。ただし、これはトランプ政権が同盟国としての義務を維持し、米国の核の傘による保護を拡大し続けるかどうかに大きく左右されるだろうと述べた。
米政府は最近、ロシアのいかなる攻撃からも欧州のNATO加盟国を守るという長年の方針について、矛盾したメッセージを発している。これについて、パイファー元大使は懸念を表明した。「米国の核抑止力の信頼性について、ポーランドとドイツではすでに疑問の声が上がっている。米国の抑止力に対する信頼を失えば、同盟各国は代替手段を模索するかもしれない」
米国が核超大国としてNATOを率いていた頃は、同国の核の盾に守られていた同盟国には独自に核兵器を保有する動機が生まれにくかった。もしその盾がなくなれば、プーチン大統領が核兵器の使用をちらつかせる中、かつては米国に守られていた国々が自国の核防衛体制の構築に奔走し始めるかもしれない。パイファー元大使は、ロシアの行動が核拡散のリスクを高めているのは明らかだと強調した。
筆者の取材に応じた米カリフォルニア大学国際紛争・協力研究所のスペンサー・ウォーレン博士は、プーチン大統領が自国の国境を越えて侵攻した事実は、欧州をはじめとするロシア周辺地域の脅威の計算式を大きく変えたとした上で、「これには、ロシアがウクライナでの使用をちらつかせた核による脅迫も含まれる」と説明する。
同博士は、ロシアの脅威が増大する一方で、米国の関与に対する信頼感が低下する中、ドイツ、ポーランド、そして恐らくトルコといったNATO加盟国の中には、核拡散につながる恐れのある措置を検討する動きもあると指摘。こうした背景の中、NATO加盟国の中から核が拡散する可能性が高まっていると警告した。


