世界で最もダウンロードされている米国発の教育アプリ「Duolingo」。学べる言語は42言語、加えて音楽・数学・チェスのコースが提供され、しかもそれが完全に無料。グローバル月間アクティブユーザー数は1億人超と、語学学習アプリのシェアの9割を占め、首位を独走している。
日本でも2023年に続き2024年通期で国内での教育アプリのダウンロード数、および収益ともにカテゴリートップとなった。
さて、そんなDuolingoがこのたび「Duolingo ハンドブック」なるデジタル小冊子を公開したことをご存じだろうか。
創業2012年、今や時価総額160億ドル、800人以上の社員を擁する同社のテネッツ(教義)には、その成功の理由が隠されているかもしれない。以下、同社が自らその企業文化、組織運営の原則をまとめた同書の中身を紹介する。
※本稿は60ページ以上に及ぶ 「Duolingo ハンドブック」の内容を抄訳・編集したものである。
ピッツバーグのスポーツバーに集ったオタクたちが——
まず、このハンドブックはどこかのスタートアップモデルを真似たものではない。「誰もが利用できる世界最高の教育を開発する」という大胆な夢を抱え、ピッツバーグのスポーツバーに集った数人のオタクたちが築き上げてきたものだ。
Duolingoは創業以来14年間にわたり「うまくいくこと」「いかないこと」を試行錯誤し、その全てを記録に残すことにした。そうした失敗と成功、そしてさまざまなエピソードを通して、私たちの中核となる原則を描き出したのが「Duolingo Handbook」だ。読者には本書を通して、テクノロジー企業の枠を超えた、われわれ独自の組織作りの素顔を知ってほしい。
その哲学のいくつかを以下に紹介する。
1.長期的に考える(Take the Long View)
Duolingoは短期的な利益よりも長期的な成功を優先します。世界最高の教育アプリを作るには何十年という年月が必要になると最初から理解していたからです。そのため、一時的な収益を増やすために広告を過剰に表示するなどの短絡的な戦略は避けています。「誰もが利用できる、世界最高の教育を開発する」というミッションのもと、目の前の利益よりも未来への投資を選び、ユーザー体験を損なわないようにしています。具体的には以下のことでこれを実現します。



