「英語は試験のための知識ではない。グローバルな現場で信頼を得るために、 多様な価値観の中で対話を重ねるために、 そして未来を切り開く力として、英語は使われていくべきだ。
だからこそ英語力とは、“何点を取れるか”ではなく、 “誰と、どんな関係を築けるか”で測られる時代に移っている」
こう話すのは、元英検面接委員であり、英語学習関連書籍や教科書19冊以上の著者であり、「Simple English/シンプルイングリッシュ®」を日本で初めて提唱した酒井一郎氏だ。
酒井氏が提唱するのは、「Easyモード英語攻略法」。特徴は明快だ。難しい単語や文法にとらわれず、シンプルな英語で「話す力」を先に育てる。そのうえで英検やTOEICといった試験に取り組むことで、試験も会話も同時に効率よく習得できるという。
以下は、酒井氏の寄稿である。
学んでいたのは、“話すための英語”ではなかった
「英語を話せるようになりたい」と言って、何年経ったのだろうか?
気がつけば、中学からの英語学習歴は10年を超えていた。アプリも、スクールも、教材も、一通り試してきた。TOEICの点数も、そこそこ取れていた。「英語ができるんですね」と言われることもある。
けれど、実際に話そうとすると……言葉が出てこなくなる。外国人を前にすると、頭が真っ白になる。「え? 私、英語をやってきたよね?」と自問してしまう。
思い返してみると、私たちが最初に英語を学び始めた目的は、「話す」ためではなかった。受験、資格、テスト。とにかく正しい文法と難しい単語を覚えることが最優先だった。文法ミスは致命的。口に出す前に、頭の中で文章チェックが始まる。
しかし、それでは会話とはいえない。
日本人の英語は、「話すための幹」が育っていない
まさに、これが現状だ。

英語を“木”にたとえるなら、日本の英語教育は「葉っぱ(難しい単語)」ばかり育てて、根(基本語彙)も、幹(話す力)も育っていない。
これでは、風が吹けばポッキリ折れてしまう木のようなもの。会話が成立しないのも無理はない。