降りかかる技術的課題
ハッブル望遠鏡は決して幸先の良いスタートを切ったわけではない。最初に届いた画像はぼやけていたが、これは口径2.4mの主鏡に予期せぬ欠陥があったためで、1993年にNASAの宇宙飛行士の手で修理が施された。有人修理ミッションはその後も2009年まで続いた。
最後の修理ミッションでは、姿勢制御を行うジャイロスコープ6基を新品に交換した。だが2023年以降、稼働中の3基のうち1基に不具合が相次ぐようになり、NASAは2024年、正常に機能する2基のうち1基のみで望遠鏡の姿勢を制御し、残る1基を温存する方針へと切り替えた。
現在は、望遠鏡を観測対象へ向けるための動作にかつてよりも時間がかかり、このため観測対象に関する柔軟性も低下していて、たとえば金星や月の観測はできない。だが、望遠鏡そのものはまだ使用可能だ。
ハッブルの後継機
ハッブル望遠鏡の設計寿命は15年。つまり、15年間使用することを想定して設計されたものだった。ドマガルゴールドマンは、「それが現在も稼働しているという事実は、われわれの旗艦観測装置の価値を証明するものであり、ハッブルのスピリットを受け継いで稼働する予定のハビタブル・ワールズ・オブザバトリー(HWO:Habitable Worlds Observatory)にとって重要な教訓となっている」と述べている。
HWOは、ハッブルとジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の後継として計画されている次世代の大型宇宙望遠鏡だ。紫外線、光学(可視光)、近赤外線での観測が可能で、太陽系外生命の探査を目的に設計され、地球型系外惑星を特定・探査して生命が存在する兆候がないかを調べる役割を担う。もちろん、前例のない感度と解像度を備えた汎用観測装置としても運用される。
NASAではHWOに先立ち、35億ドル(約5070億円)を投じて開発中のナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡の打ち上げを2027年5月に予定している。この計画についてNASAは4月24日、早ければ2026年10月の打ち上げを目指すと発表した。


