ビデオゲーム業界における投資とM&Aの冷え込みは2025年第1四半期にさらに和らぎ、2023年後半以来もっとも活発な四半期として78億ドル(約1兆1000億円)を超える規模に達した。DDM Games Investment Review(以下DDMレビュー)による最新四半期レポートによれば、新規株式公開(IPO)の金額も急増し22億ドル(約3194億円)に達したという。
投資とM&Aの動向が正しい方向に向かっている
上記レポートのディレクターであるミッチェル・リーヴィスは「近年の混乱期を経て、『2025年まで生き延びろ』という言葉がゲーム業界を象徴する標語になったことは間違いありません」と述べる。「DDMレビューとしては、2025年を通じてレイオフや戦略転換、コアではない事業の売却が続くと予想していますが、投資とM&Aの動向が正しい方向に向かっているという確かな回復の兆候を、データは示しています」。
DDMレビューの分析では、今回の改善をもっとも押し上げたのは190件にのぼる投資案件で、合計44億ドル(約6388億円)となり前年同期比で370%増加した点だ。一方、M&A(合併・買収)は3分の1以上減少したものの、取引額は55件で33億ドル(約4791億円)にのぼっている。
不振を招いた、パンデミック後の反動
ハリウッドのメディア企業が2024年に経験した、レイオフやリストラ、劇場興行の衰退、そしてケーブルテレビからオンライン動画ストリーミングへの大転換と同様に、ゲーム業界も別の形で同じくらい深刻な課題に直面してきた。
ゲーム業界の不振を招いたのは、パンデミック後の反動である。ロックダウン中や直後にあらゆる種類のゲームに熱中していた人々が、従来の生活に戻り始めたことで需要が落ち着いたのだ。さらにAAA級の大型タイトルは、数年間で数億ドル(数百億円)規模を投じるハイリスクの賭けになりやすく、ワーナー・ブラザース・ゲームスの『スーサイド・スクワッド』が1年前に短期間で失敗したように、成功を保証できないリスクが大きい。
もうひとつの主要収益源であるモバイルゲームも、アプリストアには140万本を超えるゲームがひしめいており、その中で大きく成功できるタイトルはごく少数だ。さらに金利上昇で資金調達コストが上がり、投資家が低リスクの代替投資先を選ぶようになったのは当然といえる。
AIツールの活用や大規模投資に頼らない開発手法が広がる
しかし、最近のロサンゼルス・ゲームズ・カンファレンスで多くの登壇者が指摘していたように、金利環境の変化やゲーム開発への新しいアプローチにより、この状況は徐々に緩和されつつあるようだ。人工知能(AI)ツールの活用や大規模投資に頼らない開発手法が広がり、小規模な企業でも競争力を発揮し、必要な資金を調達しやすくなっている。
レポートは、「業界には2024年を乗り越える中ですでに前向きな兆候が見えていたが、第1四半期を終えた段階で、事態が確かに好転しているように見える」と述べる。



