量子コンピューティングは今後のブレークスルー次第
また、欧州が世界的リーダーとされる量子コンピューティング技術にも過度な期待は禁物だ。
欧州の量子系スタートアップは2023年に7億8100万ドル(約1140億円)を調達しており、この額は北米の3倍に相当する。量子システムは、特定の課題について従来のコンピューターの1億倍の速さで解決できるとされ、このことは直接的に消費エネルギーの削減にもつながる。専門家によれば、量子技術によるイノベーションがさまざまな分野で進めば、2035年までに世界のCO2排出量を年間最大70億トン、つまり全体の18%に相当する量を削減できる可能性がある。
ただし、量子コンピューティングがAIの処理全般に使えるものになるかどうかは不透明だ。現在の量子コンピューターは、最適化やシミュレーションといった特定分野で卓越しているが、その動作には極低温環境や大がかりな制御システムが必要で、それ自体が多くの電力を消費する。
しかし、そのことを認めた上で、この報告書は、「量子シミュレーションがすでに電池化学などの分野でブレークスルーを加速させている」と述べており、著者らは「これらの進展は、次世代の高性能バッテリー開発の基盤となっており、うまくスケールできれば、2035年までに年間最大140億トンの排出削減が可能だ」と主張している。もちろん、今後のブレークスルー次第では、量子コンピューティングが一気にあらゆる用途に広がる可能性もある。


