ルールに愚痴をこぼすだけでいいのか
北野:海外と比較して日本におけるロビイングの状況に特徴はありますか。
別所:欧州やアメリカでは、ロビイストと呼ばれる人たちにいろんな案件がもち込まれ、果たす役割も明確です。おそらくアメリカのロビー業界にはものすごいお金が支払われています。それに比べて日本にはそうした活動がほとんどありません。
北野:その理由は歴史的な背景なのか、教育が影響を与えているのか、どう思われますか。
別所:私は「国に任せたいと思うか」ではないかと感じます。どちらかというと、日本ではこれまで「税金を納めた国や行政庁が、よしなにやってくれる」という感じでした。そうではなく「自分たちがルールを動かしていかないと世の中が良くならない」と思えば、自分で考えていくことになる。本気で現状を変えたいと思うかどうかではないでしょうか。
北野:経営者にとっても他人ごとではないですね。
別所:ルールはちゃんと見直すことができると考えていただきたいです。そうでないと「ルールがあって困る」という愚痴しか生まれません。本当に困るのだったら、どこを変えればいいのか。知恵を絞って考え出すしかないと思うのです。

北野:政策コンサルタントに向くのはどんな人ですか。
別所:この業界は本当に産業としてまだ小さいですし、業界自体も駆け出しなので、新しい領域で頑張ってみたい人がいいと思います。
北野:ところで、別所さんから「地方でカフェも経営されている」と取材前に聞いて意外でした。
別所:この国の課題のうち、自分でもできることを解決したいです。そのひとつが「地方でどうやって産業をつくるか」。本当に解決したいなら、自分たちの会社でビジネスを始めるしかないと。ヤフーにいた10年以上前からご縁があるのが北海道の真ん中にある美瑛町です。そこでカフェ「アルボリート」を開き、民泊事業にも取り組んでいます。
北野:ゼロから何かをつくるのが好きなのですね。
別所:美瑛は今、オーバーツーリズムでさまざまな問題が起きています。いろいろな意見を町の人たちに伺いながら、観光と農業、街の景観をどういうふうにしていくかといった課題の解決を図りたい。ロールモデルがないなか、自分の力をその土地のために役立てたいと思っています。
別所直哉◎1957年、神奈川県生まれ。81年慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、持田製薬入社。労務、法務・知財、事業開発を担当。99年ヤフー入社。法務部長、法務本部長を経て2018年まで執行役員(法務・知財、広報、政策企画、公共サービス、リスクマネジメント管掌)を務め、個人情報保護法、著作権法、公職選挙法、消費税法、民法(債権法)など数多くの法改正にかかわる。19年10月より京都情報大学院大学教授。20年4月から紀尾井町戦略研究所代表取締役。


