社会課題をそれぞれの立場へ翻訳する
北野:政策コンサルタントの立ち位置についてお聞きしたいです。ルールをつくると聞いて、最初に思い浮かぶのは行政や政治家ですよね。
別所:私たちの役割には、そういうルールをつくっていける人たちに「ルールを変えていく必要性」を正しく伝えることがあります。行政の人たちも議員さんも、みなさんすごく努力されていますが、どんなに頑張ってもすべての情報が入ってくるわけではない。変更の判断をしてもらうためには、誰かが現場の情報を届けなくてはなりません。
北野:別所さんの会社にはさまざまなクライアントがいると想像しますが、民間企業を例にした場合はどのような手順を踏むのでしょう。
別所:まずクライアントから話を聞き、現状の課題を整理する入り口の部分には時間を使います。民間、行政庁、議員さんでは、それぞれのプロトコル(手続きや決まりごと)が異なります。その違いをわからないまま要望をもっていっても、せっかくの話が伝わらないことがあります。プロトコルの違いを把握している人が間に入って翻訳する必要がある。それが政策コンサルタントのひとつの役割です。
北野:具体的にどんなすれ違いが起こるのですか。
別所:民間で事業をやっている人たちは、自分たちのビジネスに引きつけてルール変更の必要性を訴えがちです。それも大事ですが、ともすると「こういうルールや制度が必要だ」と言いたいのに、自社の製品やサービスの売り込みだけに聞こえてしまう。
行政庁の人たちは、現状で見えにくいルール上の問題を指摘してほしいと思っているので、ただのセールスに聞こえてしまうと耳を貸さなくなってしまう。だから「本当の課題は何なのか」をちゃんと抽出して伝えなくてはいけません。
議員さんの場合は、行政よりもさらに短い時間で正しく理解してもらうため、何が課題なのかを伝えていく工夫に心を砕きます。
北野:もっていく先は行政と議員、あとはメディアといったところでしょうか。
別所:本当に課題によります。その課題を研究している研究者がいれば、ご意見を伺ったり相談したりするケースもあります。現状をもう少し正確にとらえたいと思ったら、事業者自身に聞くのも重要です。さらに問題がもち込まれる先として、例えば消費者センターさんに状況をヒアリングすることもやったほうがいい。もっていく先を考えるのも仕事です。
北野:そうした活動を通じて、途中で戦略を練り直すこともありますか?
別所:それは日常茶飯事です。最初に考えていた解決策が本当の解決策にならないケースも多いですから。いろんな人たちに意見を聞きながら、正しい解決策を考えなくてはなりません。
政策コンサルタントに最も重要なのは「調査能力」ですね。いろんな相談を受けたとき、課題を正しく分析できなくてはいけない。資料をちゃんと見て分析する力も求められるし、現状の検討状況がどうなっているのかをさまざまなところにヒアリングして分析する行動力も不可欠です。



