あらゆる職業を更新せよ!──既成の概念をぶち破り、従来の職業意識を変えることが、未来の社会を創造する。「道を究めるプロフェッショナル」たちは自らの仕事観を、いつ、なぜ、どのように変えようとするのか。『転職の思考法』などのベストセラーで「働く人への応援ソング」を執筆し続けている作家、北野唯我がナビゲートする(隔月掲載予定)。
北野唯我(以下、北野):別所さんの著書を読んで「日本のネットビジネスの歴史をつくってきた方」だと実感しました。以前は同じ商品をネットで買っても消費税がかからない例があるのは変だったし、オンラインで選挙運動すると違法なのもおかしかった。それらを変えるのに粘り強く取り組んだのですね。
別所直哉(以下、別所):私たち政策コンサルの仕事とは「何かを変えていく仕事」です。諦めたら変わらないから、変わるまでやり続けるしかない。いったん変わったルールでも、次の課題が必ず出てくるので、変え続けるしかないだろうと思います。
北野:今のキャリアができた分岐点を挙げるなら?
別所:きっかけは古物営業法の改正でした。私たちヤフーをはじめとしたネットオークションが盛んになり、さまざまな課題がもち上がった頃の話です。当時の井上雅博社長が「せっかく成長してきたネットオークションの市場に影響がある」と考えて、ルールを適切に変えることに関心をもった。そこで自社の法務部門に期待したわけです。
でも、私はルールメイキングのプロセスも知らなかったし、どう国が政策をつくるのかもまるでわからなかった。法改正という渦に投げ込まれ、初めてルールのつくり方が見えてきたのです。
北野:社員がまだ100人ほどのヤフーにひとり目の法務として入る意思決定をどうしてされたのですか。

別所:新卒で入った製薬会社では、人事の業務を8年ほどやりました。そのうち自分のキャリアや世の中のことを考えて、会社に法務部門というものがちゃんとあれば仕事をしてみたいと思ったのです。そこで法務部を立ち上げる経験をしましたが、次はスタートアップで「自分が考える法務部門」をつくることに興味が湧きました。
北野:別所さんの根底にはアントレプレナーのマインドがあるのが面白いです。法律でこんなクリエイティブなことをやる方を初めて見たので。
別所:もともと法務というのはクリエイティブな部門ですよ。現実に対してノーと言うのは法務の仕事じゃない。私がヤフーの法務に入って掲げたのは「戦う法務」というキャッチフレーズでした。