国内

2025.05.11 13:30

ゲノム解析技術で不妊治療の現場を変える:Varinos 桜庭喜行CEO

桜庭:子宮内フローラ検査は、国内の350以上の不妊治療施設に導入していただいて、解析検体数も5万件以上と、それなりの市場ができてきました。最近では、海外での検査の提供も開始しています。

木村:順調に増やしてきましたね。国内で高度な不妊治療を提供しているのは700施設ほど。そう考えると、すでに市場の半数以上には入っていることになります。

桜庭:とはいえ、各導入先で患者の皆さんが我々の検査を受けているかというと、まだ一部の方に限られます。皆さんに受けていただきたいですし、その先の新しい技術もどんどんつくっていきたい。木村さんとは、サイエンスに基づいて、5年後やその先を見据えたディスカッションができるので、本当に助かっています。

木村:技術の話って、「こうやろう」と急に出てくるものではなくて、キャッチボールしていくなかでどんどん思考が深まるものだと思うんです。社内だけで議論していると、どうしても一定の方向に行きがちだけれど、我々のような立場だと、「その話は、このキーワードでとらえると別の考え方もできるんじゃない? 例えば、こういう論文や研究者がいますよ」と外部の知見をお渡しできますから、お力になれてうれしいですね。

桜庭:ご支援もあって、実は不妊治療以外の領域でも、我々の技術が役立てられそうなことが研究レベルでわかってきました。子宮内フローラ検査の技術で菌の種類や割合がわかるのですが、子宮内膜症や早産なども菌と密接にかかわっているというデータが明らかになっているのです。遺伝子検査という観点だと、我々の技術は、がんや遺伝病にも応用できる可能性がある。新しい検査を患者さんに届けるという目標をもって開発をしていきます。

木村:まずは子宮内フローラ検査のエビデンスをさらに積んで、不妊治療をしている患者さんにあまねく使ってもらえるように広げていく。会社の足腰をしっかりと鍛えて、強みをさらにほかの領域に展開していく。2本目3本目の矢をつくることにも、しっかりと貢献していきたいですね。


きむら・ひろこ◎ファストトラックイニシアティブ(FTI) プリンシパル。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。博士(医学)。シグマクシスに入社し、経営コンサルティング、M&Aアドバイザリー活動に従事。2013年8月よりFTIに参画。

さくらば・よしゆき◎Varinos代表取締役CEO。1972年生まれ。埼玉大学大学院博士後期課程修了。博士(理学)。理化学研究所ゲノム科学総合研究センター、米国セントジュード小児病院、GeneTech、イルミナなどを経て、2017年にVarinos創業。

文=眞鍋 武 写真=平岩 享

この記事は 「Forbes JAPAN 2025年5月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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