経営・戦略

2025.05.12 11:00

米スケッチャーズを1.4兆円で買収、貿易戦争を好機にした3Gキャピタルの逆張り戦略

Photo by Brandon Bell/Getty Images

Photo by Brandon Bell/Getty Images

トランプ米大統領が引き起こした貿易戦争は、中国での製造に依存するアパレルや靴メーカーの株価を大きく押し下げている。しかし、5月5日にスポーツシューズメーカーの「スケッチャーズ」を買収すると発表した投資ファンドの3Gキャピタル(以下3G)は、この状況をチャンスと捉えた模様だ。

3Gは、約94億ドル(約1兆3700億円)を投じてスケッチャーズを買収し、株式を非上場化する。この買収額は、直近のスケッチャーズの株価に対して約30%のプレミアムとなるが、1月につけた高値からは20%のディスカウントとなっている。3Gがシューズ業界に投資するのは初めてのことだが、同社は過去にバーガーキングなどを買収した際と同様に「知名度の高い消費者ブランドを割安で買う」戦略をとっている。

この取引に詳しい関係筋によると、3Gはスケッチャーズの今後のビジネスを数十年スパンで考慮しており、中国に置く製造拠点やサプライチェーンを移転させる計画はないという。

3Gは、運用資産の大半が創業者たちの自己資金で、外部からの資金がごく一部に限られているという点で、一般的なプライベート・エクイティとは一線を画す。また、同社が企業を買収するのは、5年に1回程度のことだ。

3Gは、世界最大のビール会社「ABインベブ」の前身を築いたことで知られるアレクサンドル・ベーリングが、2004年にブラジルのビリオネア3人と設立した企業だ。同社は現在、ベーリングと「レストラン・ブランズ・インターナショナル(RBI)」の元CEOダニエル・シュワルツらが共同経営パートナーを務めている。

ベーリングはフォーブスの昨年のインタビューで、3Gの投資戦略について「確実に成果が見込めるタイミングまで待つスタンスだ」と説明していた。同社は、買収した企業を競合の投資会社よりも長期間にわたって保有する傾向がある。

「彼らは、買収した企業を3〜4年程度で売却するような従来のプライベート・エクイティとはまったく異なる存在だ」と、ロンドン・ビジネス・スクールのドミニク・ホールダー准教授は述べている。

3Gがこれまでで最大の成功を収めた投資案件は、2010年に40億ドル(約5810億円)を投じたバーガーキングの買収だった。同チェーンはその当時、金融危機の余波で業績が悪化し、株価が過去2年で31%下落していた。3Gはこの投資から200億ドル(約2兆9000億円)以上の利益を得た後に、ポパイズなどの複数のファストフードチェーンを買収し、現在はRBIとして展開している。3Gは、RBI株の26%を保有する筆頭株主だ。

次ページ > バフェットと組んでハインツを買収

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事