━━興味深いですね。性格特性の話が出ましたが、同じ場所に落ち着きました。人間の本質ということなのでしょう。現時点で共有できるような発表はありますか?
ウィックハム:月並みな比喩かもしれませんが、11KSは“実験室”なのです。ほとんど完成しているもの、半分完成しているもの、4分の1完成しているアイデアの実験室のようなものです。書籍やイベントは広範囲にわたるもので、土を耕し、肥沃にし、植え付けの準備をするようなものです。大学との協業も、基本的には同じアプローチです。対話を促し、考えてもらう機会を設けることです。そうしたこともあり、今後発表するものは、私たちにとってテーマの観点から重要だと考えているものになるでしょう。
もし起業家支援のプログラムを運営していて、1年、2年、3年単位で考えているなら、“スタートアップの生物学”を理解しているとは言えません。スタートアップの生物学は15年もかかる長旅です。これが政治家や企業関係者の参加を難しくしています。そこまで長期的な視点で考えることができないからです。日本は長期的な視点をもっていると言われますが、世界の多くの人々は15年という視点をもち合わせていません。自分の選挙や、昇進について考えなければならないからです。もう一つは、包括的な教育はできないということです。
個人的な不満があるとすれば、一部の人たちが日本に対して悲観的である点です。「日本を変えなければいけない。日本は壊れている。日本を直す必要がある」と。私は「冗談を言ってはいけません。日本は壊れてなどいませんから。日本を“変える”のはおかしなことです」と反論しています。イノベーターになるべく生まれてきた人々は少数ながらいます。
次のテーマは、これらの人々をどう特定し、長期的に彼らにコミットするかということです。そのイノベーターを長期的な視点で育成と支援ができるコミュニティに託し、土台を作って世界最高のリソースへアクセスできるようにする━━。日本では、その2点が欠けています。今はまだ外部の人たちが適切なレベルの支援を与えられておらず、外の世界へつなぐこともできていません。
だから政府関係者との対話では、「 “教育”ではなく、例えば米デラウェア州のように、起業しやすくしてください。日本での起業は税制上の観点から難しいのです。ベンチャー投資業界が採用している米国会計基準(US GAAP)で企業を経営できるようにしてください。そして米国の法的構造を採用してください」というようなことを伝えました。
米バブソン大学のために講義をしたとき、同じく講師を務めた弁護士が、南米出身の学生たちに「デラウェア州で会社を設立しなさい」と話していました。「デラウェア州で設立されていない会社に目を向ける米国のベンチャー投資会社はない。そんなに難しいことではなく、欧州のスタートアップならどこもその方法を知っている」と。
私たちが力になりたいのは、こういった点なのです。いかに真に影響力のあるリーダーを特定し、互いに結び付けて育てるか、ということです。彼・彼女らが最大のインパクトを与えますから。11KSは、緩慢で融通が利かない、予定調和なものではありません。むしろ、こうしたエネルギーをつかまえるための枠組みです。あらゆる方向に向かうポテンシャルを秘めているので、まずはこのエネルギーを制御しなければなりません。正しく制御できれば、速く成長するでしょう。あらゆる偉大なスタートアップと同じです。
━━カウフマン・フェローズのCEOとしての経験もあるので、解決策を見つける方法もご存じなのでしょう。
ウィックハム:どれほどの信念が必要だったか、きっと想像もできないでしょうね。ひたすら暗闇の中にいましたから。あらゆるかたちで潰されそうになりましたよ。なので、ご心配なく。準備はできていますよ(笑)。


