━━性格特性のご指摘は興味深いですね。あまり焦点を当てられたことがない気がします。起業やベンチャー投資の場合、その多くがビジネスのアイデアや、起業・経営の手法についてですから。
ウィックハム:あるリーダーシップの専門家との会話が私の世界観を揺るがしたのです。彼女が「世の中にはHuman-beings(人間)がいてほしいのですが、今はHuman-doings(人間っぽいことをする人)しかいません」と言ったのですね。面白いし、賢いなと思ったものです。それから、「人間」のありようについて考え始めました。
それを起点に産業的な思考や産業システム、教育システムについて考え始めました。教育システムは、主に人々を工場で働かせるために作られたものです。新聞の印刷工場であれ、自動車の製造工場であれ、規則と時間制限があります。それを最も上手く、速くこなした人が昇進する仕組みです。
その結果、効率的に働ける「人間っぽいことをする人」に運営される組織ができあがります。そこで一歩引いて、「もし自分が『人間』ならどうするか? 自分が得意なことと、本当に大切に思っていることの“交差点”に立っていたらどうだろう?」と考えてみました。スタンフォード大学で心理学の博士号を取得した心理学者のゲイ・ヘンドリックスは、その交差点に到達できる人は10倍から100倍のパフォーマンスを発揮するというようなことを話しています。数兆ドル規模の企業を築く経営者と、できない経営者の違いを説明できるのではないでしょうか。
━━どのように組織を形成していく予定でしょうか。具体的なプログラムや構想はありますか?
ウィックハム:すでに組織は設立しました。日本で法人登記も済ませ、理事会も発足しています。創設理事は、私のほか、慶應義塾大学の伊藤公平塾長、東京大学の染谷隆夫副学長です。今後、数名の企業幹部が理事に加わる予定です。
プロダクトも2つあります。書籍のラインナップと、2024年10月には「Unlock Japan」というカンファレンスを開催しました。このイベントは、私たちのミッションを心から信じ、連携できると確信している面白い人々を国内外から集める目的で“実験”として開きました。
開催に先立って、参加者に対して私たちが期待していることと、イベント開催の目的を注意深く伝えています。「これは単なるイベントや取引ではなく、コミュニティの始まりであり、皆さんは重要な創設メンバーであり、今後も参加していただきたい」ということです。もちろん、誰もが日本に戻って来られるわけではありませんが、隔年で、あるいはZoomなどで関係を保ちたいと思っています。交流やコンテンツが魅力的であれば、機を逃したくはないでしょう。少なくとも、それが目標です。


