━━11KSでは、ベンチャー投資家の育成も考えているのでしょうか。
ウィックハム:ええ、そうです。ただ、私は敢えて「イノベーター」という言葉を使っています。世界を変える組織をつくる人たち、つまり起業家を中心としたものであり、ベンチャー投資家は彼・彼女らの重要な支援者です。
ブラッド・フェルドの場合は、「Leaders(リーダー)」と「Feeders(フィーダー)」という比喩を使っています(編集部註:ベンチャー投資会社Foundry Group の共同創業者で、米アクセラレータTechstars の共同創業者)。リーダーたちが中心にいて、その周囲をフィーダーたちが囲むわけです。起業家を中心に、投資家や弁護士、会計士、メディア、政府の政策担当者、教育関係者などが支えるエコシステム(生態系)です。もっとも、11KSの究極の目標は起業家を支援することにあります。
━━以前、日本のスタートアップ・エコシステムは黎明期にあり、あなたがカウフマン・フェローズ・プログラムで経験したようなVC教育があってもいいのではないか、という提言をされていましたね。
ウィックハム:そういったことはすでに起き始めています。それと、「教育」という言葉は安易に使われがちなため、ここでは教育について同じ意味で話していることを確認する必要があるかもしれません。
投資対象である起業家でも、ベンチャー投資家でも、さまざまなかたちのイノベーターと関わってきた私の経験から言えることは、プロスポーツを例に挙げると、「レブロン・ジェームズにバスケットボールを“教える”ことは可能だ」ということです。しかし、彼はバスケットボールをするために生まれてきたような存在ですよね?
彼は天賦の才能と適性、勤勉さをもちあわせています。彼のように体格に恵まれた人はいますが、その誰もがレブロンになれるわけではありません。すべての要素をもちあわせていないからです。イノベーターも同じようなものだと私は考えています。独特の個性をもっているのです。
最初の一歩は、そのイノベーターたちを特定することです。それも、企業勤めで優れた力を発揮する人を特定するのとは異なる方法で見つけなくてはいけません。大学などの高等教育機関は省庁や企業で働く人々を育成するには最適です。今後も重要な存在であり続けるでしょう。
ただ、スタートアップを立ち上げる人々が必ずしもそこにいるとは限りません。中にはいるでしょうが、イノベーターの多くは独特の個性をもっており、従来の産業界の人材を育成する、いわゆる“ベルトコンベヤー”のような環境には適合しませんから。


