経済

2025.05.10 10:00

スペイン「大停電」、再生可能エネルギー急増に追いつけない送電系統が原因か

スペインの首都マドリードで、全国的な停電中に食料品を購入する市民。2025年4月28日撮影(Diego Radames/Anadolu via Getty Images)

今回の大停電から私たちが学んだことがあるとすれば、それは国家の電力系統は孤立して存在しているわけではないということだ。スペインは近隣諸国を支援するためにも、また自国の信頼性を高めるためにも、欧州の電力系統への統合を改善しなければならない。

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エネルギー貯蔵は、今回のような事態に対処できる技術だ。また、電力構成での再生可能エネルギーの割合をさらに高めることも重要だ。エネルギー貯蔵技術は過剰な電力を吸収できるため、発電した電力を必要な時に供給できる。また、周波数調整や電圧の安定化といった重要な機能があるため、停電時に電力を迅速に復旧させる上で大きな役割を果たす。さらに、水力や火力とは異なり、蓄電池は送電の不均衡が発生している場所にも簡単に配備できる。

スペインは歴史的に揚水発電や火力発電の貯蔵では進んでいたが、現代の電力網にとって重要な技術である大規模な蓄電池エネルギー貯蔵システム(BESS)の開発では後れを取っている。理由は、投資家に対するインセンティブが弱いからだ。他の電力貯蔵技術の存在などにより、BESSの開発計画は経済的に魅力のないものとなっている。

しかし、こうした電力貯蔵技術が軌道に乗る条件は整っている。スペインは国家エネルギー・気候計画で、2030年までに電力貯蔵容量を22.5ギガワットにするという目標を設定している。国際エネルギー機関(IEA)は、スペインでは10ギガワットを超える独立型蓄電池計画がすでに進行中であると推定している。

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スペインをはじめとする多くの国の問題の根底にあるのは、送電系統が化石燃料向けに設計されており、今日の再生可能エネルギーには適していないことだ。スペインでは2024年、再生可能エネルギーが電力構成の半分以上を占めた。15年前にはわずか4分の1だったことを考えると、これは大きな飛躍だ。

他方でこの急増に対し、送電網の柔軟性や蓄電設備の整備が追いつかず、電気料金がマイナスになったり、再生可能エネルギーが十分に利用されなかったりする一因となっている。今回の大規模な停電を引き起こした技術的な原因が明らかになれば、スペイン政府は市場の規則を目的にかなうよう改革すべきだ。

再生可能エネルギーは経済的に理にかなっている。15カ国で実施された最近の調査では、大企業と中堅企業の経営者の97%が化石燃料からの脱却を支持し、80%近くが2035年までに再生可能エネルギーを基盤とする電力系統への完全移行を支持していることが示された。

回復力のある電力系統は贅沢品ではなく、すべての国にとって必要なものだ。環境に優しい電力は現代経済の基盤であり、その信頼性は家庭、病院、交通機関、企業のいずれにとっても不可欠だ。スペイン全土での大規模な停電は衝撃的だったが、これを繰り返してはならない。

同国の幹部らは今、技術的な明確さと政策の一貫性をもって指揮するか、政治の隅で責任のなすり合いを続けるかの選択を迫られている。

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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