最近、日の出の少し前に東の空に目をやって、そこにひときわ明るい光点が1つあることに気づいた人は少なくないのではないだろうか。北極星でもなければ、全天で最も明るい1等星シリウスでもない。それは、太陽系の中で地球にいちばん近く、大きさと重さが似ていることから「地球の姉妹惑星」と呼ばれる金星だ。
「明けの明星」
太陽系の第2番惑星で、地球より内側を公転している金星は、昨年夏から半年余りの間、夕方の西の空に「宵の明星」として輝いていた。3月23日に地球から見て太陽と同じ方向に位置する「内合」となり、私たちの視界からいったん姿を消したが、地球と太陽の間を通り過ぎたのち、こんどは夜明け前の東の空に戻ってきた。今年11月ごろまで「明けの明星」として明け方の空に君臨する。

金星の明るさ
金星は太陽と月に次いで、夜空で3番目に明るい天体だ。4月27日に最大光度に達したばかりの今は、マイナス4.4等級の明るさで輝いている。なお、太陽の明るさはマイナス26.7等級、満月はマイナス12.6等級だ。
金星が次に最大光度になるのは、2026年9月の日没後の空だ。夜明け前の空で再び最大光度で輝く姿を見るには、その年の11月まで待たないとならない。
金星はなぜ明るいのか
金星がこれほど明るく見えるのは、そもそも地球に近いからだ。だが、最大光度の金星を天体望遠鏡で覗くと、三日月状に欠けて見える。欠けているのに最大の明るさになるのは、見かけの直径が大きいためだ。

地球のすぐ内側を公転する内惑星である金星は、3月23日に内合となるまで数カ月間かけて地球に近づいてきていた。今は徐々に地球から遠ざかっており、見かけの大きさは少しずつ小さくなっているが、光っている部分の割合(輝面比)はちょうど月が満ちるように大きくなりつつある。6月1日には半月状になる。
金星が明るい理由はもう1つある。金星の上空には濃硫酸の雲が広がり、惑星全体を覆っていて、これが太陽光の反射率を高めているのだ。ぜひ双眼鏡や望遠鏡を使って、金星の形や大きさの変化を観察してみてほしい。
5月の金星の見どころ
現在、金星は夜明け前の東の空で、太陽系の第6番惑星である土星と並んで輝いている。ただし、金星のほうが土星より約200倍明るい。2つの惑星は今月末、月と共演する。20日の下弦の月を過ぎたら、細く欠けゆく月が土星、金星の順に接近し、すぐそばを通り過ぎていく様子が楽しめる。もしかすると、流れ星も見られるかもしれない。
