形式的な数合わせ
軍事史の著述家・研究者で、松葉づえをついたロシア兵の動画をスレッドにまとめているChrisO_wikiは「ノルマに基づいた行動なのでは」と推測する。
繰り返される「松葉づえ突撃」もまた、何ごとも規則どおりに行われなければならないという、ロシアの強迫的な官僚主義に原因があるのではないかとの見方だ。
A Russian soldier on crutches was spotted attempting to advance toward Ukrainian positions in the Pokrovsk sector.
— Saint Javelin (@saintjavelin) April 16, 2025
Aerial reconnaissance from the Spartan Brigade captured the moment, yet another example of how the enemy sends forward its troops regardless of their physical… pic.twitter.com/ziVs3rVApk
「各部隊はこれだけの人数が必要という決まりがあるので、新しい兵士が足りなければ負傷兵で頭数を揃えるわけです」と彼は筆者に説明した。「ロシア軍は非常に官僚的で、書類上の数合わせに走りがちです」
だから、たとえ車椅子に乗る兵士であっても、形式的には武器を持つことができるのなら、戦闘に駆り出されるのかもしれない。ロシア軍の「肉弾突撃」は膨大な犠牲者を出しているので、こうした兵士が死亡しても統計のなかに簡単に消えてしまう。
Russians carrying out assaults on crutches have been seen before, but stormtroopers in wheelchairs are certainly quite something else pic.twitter.com/ycdGYTabL8
— ChrisO_wiki (@ChrisO_wiki) March 30, 2025
一方、あからさまな不正行為もあるのかもしれない。ChrisO_wikiによると、ロシアの一部の軍事ブロガーは、実兵力や人的損害の数をごまかすなど、軍の指揮官による虚偽の報告に不満を述べている。負傷兵を戦闘任務に復帰させれば、損害を最小限に見せかけ、完全な戦力を維持しているように装うことができる。その負傷兵が戦死すれば、もともと戦闘不能だったのかどうかは問題でなくなる。
「肉弾偵察」か補償金節約か
ChrisO_wikiは、松葉づえの兵士はせいぜいごく限られた戦闘能力しかなくても、ロシア側にすれば「肉弾偵察」には役に立つのかもしれないとも言う。
ウクライナの偽情報対策センターのアンドリー・コバレンコ所長は地元メディアのRBCウクライナに、松葉づえ兵は火力を誘って、ウクライナ軍の射撃陣地をあばくために使われているとコメントしている。
松葉づえをついた兵士は、FPV(一人称視点)ドローンの格好の目標になる。近づいてきたFPVドローンにロシア兵が松葉づえを投げつけ、むなしい抵抗を試みるという、ブラックコメディーのような映像もある。しかし、こうした兵士がドローンを引き寄せる役割を果たせば、仲間の健康な兵士たちは攻撃を免れ、任務を遂行する余地が生まれる。


