【結果4】組織文化がすべてを左右する

イントレプレナーが活躍するための環境要素については、「新しい挑戦に寛容な企業文化」の重要性が1位となっています。企業の成長が鈍化したり、競争環境が厳しくなると、どうしてもエビデンスベースでの経営要素が強くなりがちです。もちろん、コスト削減や赤字縮小には無駄な部分をエビデンスに基づいてなくしていくことは極めて重要なのは事実であるものの、一方で新しい事業は過去の延長上にない事も多く、エビデンスに頼っていては実現できない性質のものでしょう。
新しい事業を醸成しやすい企業は、新しい事をやろうとするひとを「変な人」と思わず、「面白い人」と呼んでいる様に思います。統計を取ったのではなく、あくまでも私の感覚なのですが、「変な人」と呼ぶと自分達の価値観の外の人という仕分けになる一方、「面白い人」というのは注目すべき人であり仲間にしたい人という位置づけになりやすいからとみています。
【結果5】ロールモデルの不在という深い課題

長い期間にわたって新規事業を起こしてこなかった組織では、新規事業をやろうとするチームやリーダーへのコーチの役割を担う人がいない為、この調査の1位になっているように「社内にロールモデル」がいないという結果となってしまいます。大企業においては、優秀な人材が豊富であることも間違いなく、正しい指南次第では、新規事業を興していける能力を有しているのは間違いありません。
一方、「どのように育成すればよいかが分からない」という組織においては、外部コーチに頼る以外はなさそうに思いますし、そういった役割を提供しているビジネスのベテランも社外には少なからず存在しています。
「ロマン」と「そろばん」のバランスを
益々変動のスピードが加速する中、企業が振り落とされずに生き残っていく為に社内文化を整え、新たな挑戦を経営として強く支援していくことが重要であるという調査結果となりました。ただ、経営者やシニアマネジメントとしてはこの「ロマン」と「そろばん」のバランスをどうとるか━━これは企業経営における永遠のテーマでしょう。そして、新たな事業分野の追求と現状事業の収益拡大が重要な事は「両利きの経営」として広く知られています。
拙著『創造する人の時代』において、産業・事業・プロダクト・サービスを発想し作り上げていく人材の重要性を訴求し、「創る人だけが生き残る」と主張してきました。ここ2年ほどで急速な生成AIの進化・普及に伴いその視点の重要度が増している様に見え、創造する組織・創造する人についての講演への要望を多く頂く様になりました。これは日本の重要な社会課題の1つとも言え、過去に「誰でも「創造する人」になれる4ステップ」として寄稿していますが、次回以後、「創造する組織」をどうつくるか。その処方箋について掘り下げていきたいと思います。


