【結果2】中堅層こそが活躍している

「企業家=若手」というイメージとは裏腹に、実際に活躍しているのは40代を中心とした中堅・シニア層でした。
大企業においては、役割毎に部署や組織が細分化されていることもあり、新規事業において、これらの複数の部署・組織とその人材を束ねられる「顔の広さ」や組織内経験が重要視されている為と思われます。この傾向はメディアなどで良く取り上げられる大学発スタートアップとは大きく異なるプロファイルとなっています。
一方で、20代、30代の社内起業家大企業においても30%以上も占めていることにも注目したいと思います。この背景を想像すると、AIやWeb3などのミドル・シニア層では知識と経験値が無い領域での事業創造においては、デジタルネイティブ世代に期待しているという事と思います。実際、かつてソニー株式会社においてもわずか11名のプロジェクトメンバーで立ち上げたワークステーション事業において事業部長や部長クラスが20代や30代前半だったこともあり、新分野における新規事業開発には若い世代の登用も重要でしょう。
【結果3】求められるのは創造力と巻き込み力

イントレプレナーに必要なスキルとして最も多く挙がったのが「創造力・発想力」でした。加えて、「自律性・主体性」、「社内外の巻き込み力」といった大企業の中で新しい流れをおこすための力が求められています。
ではこういったスキルをどうやって育成するのか、あるいは元々そういったスキルを持った人材をイントレプレナーに登用するのかという疑問がでてくると思いますが、これらのスキルは一朝一夕で身につくものでない事は想像に難くありません。
私の経験では、早い時期から複数の役割や事業に触れることで複眼的な見方や人材ネットワークを構築できるようになり、それらの人材が更に経験を積んだ40代・50代で新規事業という新しい分野への挑戦での活躍が期待されるようになります。人材マネジメント的には、意図的な他分野経験などを行うといった施策も重要と考えます。

実際、調査によれば、「社内外の人的ネットワーク構築の支援」が育成方法の1位となりました。「組織横断のプロジェクトへのアサイン」といった他分野・多分野に触れる機会も多くの企業が取り入れていることがわかります。社内大学を創設したり、長期にわたる育成プログラムを開始するといった企業もあるものの、実地で新規事業の創造に関われる機会が重要であるのは間違いなく、少なくない企業で長期にわたって事業のポートフォリオに大きな変化がない事から内部人材への新規事業経験を提供することが難しくなっているかもしれません。

昨今「成果主義」という言葉を良く耳にしますが、回答の6番目に「成果だけでなく挑戦も評価する制度設計」とあります。既に立ち上がった事業を成長させることも容易ではないものの、まだ立ち上がっていない事業を新たに立ち上げ、成功させることは遥かに難しいと私自身の経験からも感じています。制度で吸収できる課題なのか否かは、判断が難しい問題であるのは間違いないですが、既存の事業を継続する仕事をしていた方が有利に働く仕組みは改善される必要があるとみています。


