米アリゾナ州フェニックス・スカイハーバー空港のターミナルを出て、タクシーやライドシェア車両の待合所に向かうと、間近に迫った未来の光景が見えてくる──。アルファベット傘下のウェイモのロボタクシー(自動運転タクシー)が、人間が運転するタクシーやウーバーの車両の横で、乗客を運んでいるのだ。
ウェイモのロボタクシーサービスはサンフランシスコやロサンゼルス、シリコンバレーに広がった後、最近、テキサス州オースティンにも進出した。中でもここフェニックスは、同社が2020年に一般向けて有料サービスの提供を最初に開始した場所だ。そして今、この街がウェイモのサービスを支えるロボタクシー車両の製造拠点となっている。
フェニックスの空港から東に約20分のアリゾナ州メサにある、約2万2000平方メートルの工場は、2023年10月に開設されて以来、ロボタクシー向けの装備を搭載したジャガーの電動SUVを、毎日数台生産している。
「当社はこの工場の生産スピードを飛躍的に向上させて、自動化する計画だ」と、ウェイモの車両製造責任者であるケント・ユウは語った。以前はアップルとGMの製造部門を統括していた彼によると、今後の数年でウェイモは、この工場から年間数万台規模の自動運転車両を送り出す計画だという。
大手自動車メーカーの工場が、年間数十万台を製造するのに比べれば、ウェイモの車両製造台数はごくわずかなものだ。しかし、ウェイモが現状で保有する1500台のロボタクシーは、週あたり25万件以上の有料乗車を創出し、1台あたり1日約24件の利用実績がある。メサの工場が1万台のウェイモ車両を路上に送り出せば、追加で1日あたり約24万件の乗車が可能になり、週あたり150万件以上の乗車が追加される。
このレベルに達すれば、ウェイモの年間売上高は20億ドル(約2890億円)に跳ね上がる可能性があり、昨年の推定1億ドル(約140億円)から大幅な増加になると試算できる(ウェイモはこの見積もりに関してコメントを避けた)。
ようやく実を結ぶ「巨大な賭け」
ウェイモはメサの工場への投資額を明かしていないが、この工場は同社の成長目標達成に欠かせない存在だ。2009年から始まったテストやパイロットプログラムと並行して、ウェイモはこれまでの3回の資金調達ラウンドで110億ドル以上(約1兆5900億円)を調達した。さらに、2009年から2020年にかけてグーグルが数十億ドル規模の投資を行った結果、ウェイモは昨年、ようやく本物のビジネスになったのだ。
ウェイモは今年2月、フェニックス、サンフランシスコ、ロサンゼルスの3都市で週に20万回以上の有料乗車を提供していると発表したが、その翌月に4つ目の都市、オースティンに進出した。さらに今夏にはジョージア州アトランタ、来年にはフロリダ州マイアミと首都ワシントンでのサービス開始を予定しているほか、テネシー州ナッシュビルや東京でもテストを実施中だ。これらの都市でのオペレーションが順調に進めば、ウェイモは間もなく週に100万人以上の乗客を運ぶ企業になる可能性がある。
アルファベットによる16年に及ぶ巨大な賭けが、ついに報われようとしている。