6. アンカリング効果
「元値は200ドル(約3万円)だけど、今なら99ドル(約1万4000円)!」などと書かれた値札をよく見かける。このような表示では、元の値段があなたの中で基準になる。たとえその商品が実際には200ドルで売られていなかったとしても、それに比べて99ドルはお買い得だと感じるだろう。
専門誌『Psychonomic Bulletin & Review(サイコノミック・ブリティン・アンド・レビュー)』に2017年に掲載された研究によると、これは「アンカリング効果」として知られている。研究で説明されているように、人間は通常、メンタルリソースを節約する認知戦略を選ぶ。意思決定に関しては、「アンカリング」でメンタルリソースの節約が簡単になる。
購買習慣の観点から見るとアンカリング効果とは、消費者が最初に目にした数字が、脳が他のすべてを判断するための基準点になってしまうことを意味する。そのためセールやまとめ買いによって自分はお得な買い物をしたとか、賢い買い物をしていると思い込んでしまうことが多い。だが実際には、あなた自身の認知バイアスが自分に不利に働いているだけだ。そうして多くの場合、店側の思惑通りの金額を支払うことになる。
7. 保有効果
人間は、商品やサービスを一度でも「自分のもの」だと思ってしまうと、それを手放すことは難しくなる。たとえ保有期間が短かったとしても、所有意識により手放すハードルが上がる。研究が示すように、この現象は「保有効果」として知られている。つまり、所有している(または所有していると感じている)ものを過大評価する傾向のことだ。
マーケターは無料のお試しや返品、あるいは「購入前のお試し」を提供して保有効果を利用している。一度手にした商品はたとえ一時的であっても、手元に置いておく可能性が高いという前提に立っている。
このささやかな所有意識は判断を大きく歪め、その製品がない暮らしが物足りないように感じさせる。その結果、無料のお試しが終わると、潜在的に買いたいという衝動に駆られる。本当にそれを必要としているからではなく、すでに生活の一部になっているように感じるためだ。


