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2025.05.10 15:00

なぜ「不要な物」を買ってしまうのか? 脳科学に基づきマーケターが仕掛ける7つの罠

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3. おとり価格

あなたは、日常的に「ランク分けされた」料金オプションに直面しているだろう。ネットフリックスは「広告付きスタンダード」「スタンダード」「プレミアム」のサブスクリプションプランを提供し、スターバックスは「トール」「グランデ」「ベンティ」のカップサイズを提供している。「おとり価格」として知られるこの戦術は、買い切りからサブスクまであらゆるビジネスモデルの定番で、業者が最も利益を得られるオプションに客を誘導するよう綿密に設計されている。

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ほとんどの場合、最も安いものは物足りなく感じ、最も高いものは過剰に感じる。これこそが狙いだ。他と比較して、真ん中のオプションが「ちょうどいい」と感じることが多い。

だが実のところ真ん中以外のオプションは、マーケターが最初からあなたに選んでほしかった選択肢である真ん中のオプションに、あなたを誘導する役割を担っているにすぎない。そして多くの場合、真ん中のオプションにはそもそも本当に必要としていなかった機能が含まれている。

4.「 おまけ」の誘い

「無料」という言葉ほど、私たちの理性的な思考を強力にショートさせるものはない。たとえ使わないようなものであったとしても、おまけがあるだけで購入へと心が傾く。

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おまけの効果は、相互作用が生み出す多くの産物のひとつだ。専門誌『American Journal of Sociology(アメリカン・ジャーナル・オブ・ソシオロジー)』に掲載された研究によると、人間は寛大さには寛大さで、否定には否定で応える傾向があるという。社会はこの相互作用の原則に依存して機能している。当然、マーケターもそうだ。

例えば消費者は、商品を購入すれば無料でトートバッグがついてくると言われれば、おまけのバッグが粗末で、商品をそもそも購入する必要がなくても、購入に踏み切る可能性が高くなる。小売業者はこのトリックを重宝している。「無料」という言葉を聞くと、多くの価値を得ているように感じる。だが実際にはあなたが自制心を失うよう、取引を「おいしいもの」にしているだけだ。

5. 対比効果

店で1000ドル(約14万円)のコートを見たとしよう。おそらく「バカバカしい」と思うだろう。そして、その隣に8000ドル(約116万円)する同じようなコートがあったとする。ほとんどの人にとって、1000ドルのコートが急にリーズナブルに思えてくる。

専門誌『Journal of Personality and Social Psychology(ジャーナル・オブ・パーソナリティ・アンド・ソーシャル・サイコロジー)』に掲載された研究によると、これは「対比効果」として知られているものだ。簡単に言えば、人間には対象物をその回りにある物と比較する傾向があるということだ。消費行動で言えば、価格や価値の評価は近くにある他のものに左右されることが多い。

マーケターは対比効果を利用して、法外な値段の商品の隣にそこそこ高価な商品を並べる。高級品や電化製品、不動産に至るまで、「中間」の選択肢を賢く合理的な買い物のように見せるために使われている。しかしたいていの場合、それが必ずしも最善の選択とは限らない。比較する中で他より良く見えるだけだ。

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翻訳=溝口慈子

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