人間老いるのは世界共通ですが、向き合い方や感じ方は日本人とドイツ人では国や文化の違いがあると、日独ハーフで日本在住28年のエッセイスト、サンドラ・ヘフェリンさんは言います。
たとえ豊かであっても、貯金がたっぷりあっても、「節約」に情熱を注ぐ――そんなドイツ人の「お金と老い支度」のリアルを、サンドラさんの著書『ドイツ人は飾らず・悩まず・さらりと老いる』(講談社)から、一部引用・再編集してご紹介します。
「お天気がよくて見晴らしがいい日には、近所の高い建物からフランスが見えたわ」
そう話すのは、ドイツのザールラントで育った女性です。フランスとの国境から4キロも離れておらず、ルクセンブルクも近い街です。
ルクセンブルクは税金が安かったため、昔から「給油するならルクセンブルクで」というのが一家の「常識」であり、ルールだったとのこと。ドライブもかねてルクセンブルクに行っては、車のガソリンを満タンにしてまた帰ってくる……。
「水を買いに国境越え」していた父
そういえば私の父親は、一時期スイスで仕事をしていて単身赴任でした。当時「ドイツの炭酸水のほうが安い」ということで、定期的に「水を買いに国境越え」をしていました。数ヵ月分、何十本も水をまとめ買いして車に詰め込み、スイスで飲み切った後、空っぽの瓶をこれまた車に積んでドイツまで運ぶわけです。理由はもちろん、店に空き瓶を返すと、瓶代が戻ってくるからです。
「ガソリン代を考えたら、瓶代なんか全部ふっとんじゃうのに、全くわりに合わない話よねえ。まあ趣味のようなものだから仕方ないわね」
当時、母親が呆れたように言っていたことを思い出します。
私の父親のような「ドイツのお父さん」は珍しくなく、ある女性はこう語ります。
「ドイツで暇な人はよく、街のいたるところで『空き瓶探し』をしているけど、うちの父親も年金生活になって時間ができたら、デュッセルドルフの森をよく歩くようになったわ。若い人が森で飲んだ後、瓶を持ち帰らないことがよくあるんだけど、父親は散歩がてら、放置された空き瓶を回収していたわけ。空き瓶一本につき30セントもらえるから、10本回収すれば3ユーロ。森はきれいになるし、小遣い稼ぎになるから一石二鳥でしょ」



